
| 日 時 | 平成22年10月4日(月) 15:00-17:00 |
| 開催場所 | 関西学院大学 梅田キャンパス 1402教室 (大阪市北区) |
| 参加者 (教 員) |
同志社大学政策学部教授 今里 滋氏 京都大学産官学連携センター寄附研究部門教授 木谷 哲夫氏 立命館大学経営学部教授 黒木 正樹氏 関西学院大学副学長・経営戦略研究科教授 定藤 繁樹氏 大阪市立大学大学院 創造都市研究科准教授 新藤 晴臣氏 大阪商業大学 総合経営学部経営学科教授 古沢 昌之氏 【オブザーバー】 経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 調整係長 山岡 由佳 近畿経済産業局 地域経済部 産業人材政策課長 内海 美保 同志社大学産官学連携支援ネットワーク事務局 武市 裕子 大学・大学院起業家教育推進ネットワーク事務局 水上・江藤 |
| 討議の趣旨 | 大学の垣根を越えた関西における起業家教育活動を拡充していくにはどうしたらよいか。また、どのような展開があるか。 |
トピックス
ビジネスプランコンテストについて
フィールドワークについて
ケース作成について
学内連携について
学生支援について
ファンドについて
外部講師について
会社等の見学会について
自己紹介ならびに現在の取り組みについて
【黒木】
立命館大学の黒木です。一応、立命館大学には1999年から勤めておりまして、2000年から学内行政として「ベンチャー企業育成体制の構築」を担当、そして授業として「ベンチャービジネス論」というものを担当してきました。初めの3~4年は地道にやっていたのですが、2005年に文部科学省の「現代的教育ニーズ支援プログラム(現代GP)」に応募して、2005年度と2006年度にかけて教育開発支援金をもらって、「ベンチャービジネス論」と「ベンチャーキャピタルファイナンス論」の2科目だけの体制から、一挙にベンチャー企業へのインターンシップ科目を交えた11科目という科目体系をつくり上げました。そういった中で、格闘しながらやっています。
【今里】
今年から政策学部所属になりました同志社大学の今里です。
うちのほうも、平成17年度「魅力ある大学院教育イニシアティブ」、いわゆる大学院GPの予算を獲得しまして、ソーシャル・イノベーション研究コースというのを立ち上げました。社会起業家の育成というのを正面から掲げているわけではありませんが、起業家養成だけと言うと、研究者の育成はどうなってるんだと言われかねませんので、一応「行動型研究者」の養成を目的に掲げています。ですが、実質的には社会起業家育成です。
現在まで3年経って、順調に進展しています。定員は10人ですが、応募者が毎年20人を超えて、ドクターコースも現在10名以上在籍しております。修了生は35人ぐらい、在籍しているのが60人ぐらいでしょうか。学生の構成は、社会人が7割を占めます。最高齢は68歳の女性の方です。
特に社会人の学び直しニーズ対応教育事業というのも持っておりまして、これを3年間やりました。そこに受講してきた方の6割以上が大学院に進学するという効果もありまして、既に社会起業として全国的に注目を浴びている「旅のお手伝い楽楽」の佐野恵一さんのような社会起業家を何人か輩出しています。
特徴としては、特に最初から農業に力を入れているということで、左京区大原に同志社農場、農家を設けまして、有機農業者を育成しています。農業部門でのアントレプレナー、ベンチャーをやるということで、社会人向けの同志社有機農業塾というのを並行してやっておりまして、現在までに11人ぐらいかな、新規就農者を出しました。うちの学生で在籍しながら有機農業家として活躍しているのが今2名おります。そういう特徴も持ちながらやっているということでございます。
【木谷】
京都大学の木谷と申します。
京都大学では10年ぐらい前から、ベンチャーに関する授業が1つだけありましたが、それがここ数年、寄附研究部門のビジネス経験ある教員を中心に、ベンチャー・起業関係の授業とが急速に増えてきている状況です。
その一つに「起業と事業創造」という授業がございます。これは全学共通科目ということで、大学院生もとれます。理科系の学部から6割、文科系の学生から4割位ですか。いろんな学部・学科から学生が来て、普段顔を合わせない学生が協力してビジネスプランを書いていく授業をやっております。やる気のある学生が多く、教員がきびしくたたいて追い詰めるということをやると、結構いいものが出てくるという感じを持っています。
もう一つが、「起業家精神涵養型」ともいうべき、「キャリアセミナー」というものを開催しています。これは、京大の学生の中に、優秀な学生ほどそうなんですが、「ほんとうに大企業とか公務員、みんなと一緒でいいのか」という問題意識を持つ学生がかなり多くなってきたということが背景にあります。京大関係で起業した人というのは実は結構います。ゆめみの深田さんとか、はてなの近藤さんとか、ライフネット生命の出口さんなどで、自分で起業しなくともたとえばディー・エヌ・エーで働いている人も結構います。先輩でそういうキャリアを選ぶ人が多いので、そういう人を呼んできて、起業とはどういうもので、キャリアの選択肢の幅を広めようという話をしてもらう、というのをやっています。第一回は時計台の大ホールで開催しましたが、非常に盛況でした。
3番目が、これは実は同志社大学と一緒にやっているんですけれども、STEP(技術起業家養成プログラム:Science & Technology Entrepreneurship Program)というものです。やる気のある学生を公募してシリコンバレーやケンブリッジなどのベンチャースポットに連れていくプログラムをやっています。今年はケンブリッジに20人ぐらいで行ってきました。日常とは違う刺激を受けるという意味では、こうした活動も非常に効果があると思っています。
4番目が、卒業生との交流です。卒業生で起業している人、起業を目指している人がかなりの数います。起業する年齢ということでは実際は学生ベンチャーというのはむしろ稀で、やはり世の中に出てから起業するパターンが多いですから、卒業生も含めた大学コミュニティーにおける起業、というのが大学にとって一つのテーマなのかなと考えています。
また、ベンチャー教育用のテキストというのを最近出版しましたので、これを授業で教科書として使うという試みも始めています。
【定藤】
関西学院大学のビジネススクールの定藤でございます。
大学での取り組みとして起業家育成のためのビジネスプランコンテストがあります。
また2005年に開設したビジネススクールでは、「アントレプレナーシップコース」があり。ビジネスプランを作成する授業ですとか、ベンチャーに関する基礎的なことを教える授業ですとか、あるいはMOT、e-ビジネス、知的財産などを履修できるコースがございます。
もどりました、大学のほうでは、例えば商学部、経済学部、理工学部などに、それぞれ2単位ぐらいのベンチャーに関する授業、科目があります。実際ベンチャーを起業された方ですとか、ベンチャー支援をされておられる方ですとか、実業界からのゲストスピーカーに非常勤講師として授業をやっていただております。
また我々は小学校から大学・大学院に続く総合私立大学です。アントレプレナーシップ精神の涵養というのは、中学とか高校の段階からやらないと効果が十分ないということがあります。そのような意味からも、中学、高校、大学と連携してビジネスプランコンテストをやっています。中学・高校生の段階では、夏休みの課題としてビジネスプランを書いてもらいまして、それを評価していくというようなことをやっております。
若干視点は違うのですが、本学は、2004年に現代GPというのをとりまして、地域、都市の再生ということをやっております。現在宝塚市との連携協定を結んで、地域フィールドワークという正課を設け、実際に学生が商店を活性化するプロジェクトですとか、あるいはイベントをやるとか、着地型観光のプロジェクトをつくるとか、いろんなプロジェクトをつくって活動しています。昨年も今年も、社会人基礎力グランプリで準グランプリとか特別賞をいただいていますので、そういった意味合いで、学生が実際に町で活動する地域フィールドワークのような実践的な授業に特色がございます。
【新藤】
大阪市立大学大学院創造都市研究科の新藤と申します。本日はよろしくお願いします。
都市ビジネス専攻アントレプレナーシップ研究分野の内容をパンフレットに沿って説明させていただきたいと思います。
私どもの大学院(創造都市研究科)は2003年に設立された、大阪市立大学では一番新しい研究科になります。創造都市研究科には、都市ビジネス、都市政策、都市情報学という3つの専攻があり、その中で私ども(アントレプレナーシップ研究分野)は都市ビジネス専攻に属しております。
アントレプレナーシップ研究分野の特徴として、まず学問体系としてはいわゆる経営学の科目を中心に教えております。具体的には、起業と経営理念、アントレプレナーシップ論といった起業特有の科目から、ファイナンスやマーケティングといった経営学の一般的な科目まであります。
カリキュラムの特徴としてはまず、中核科目に「課題研究Ⅰ」「課題研究Ⅱ」という科目があり、その中でビジネスプランを作成することが必須となっております。
あと、もう1つの特徴としては「ワークショップⅠ」「ワークショップⅡ」という1年生の必修の中核科目にて、創業者、あるいは(ベンチャーキャピタルなどの)支援者に講演を頂くという科目もあります。ただ、講演を聞くだけでは単におもしろかったという感想で終わる可能性もあります。そのため1回の授業を3限連続で行い、1限目で講師に講演を頂いた後、2限目は質疑応答を行い、3限目はそこでの論点をもとにディスカッションをするという形式で、学生のコミットメントと理解を深められるように、進めております。
教員構成については、アカデミックの世界を中心に研究を重ねてきた先生もいれば、ベンチャー企業などで実務に携わっていた先生もおります。
【古沢】
大阪商業大学の古沢です。私どもの起業教育は、2004年度に文科省の特色GPに採択されました。その特徴は、学内の起業教育に加え、高校や地域社会との連携にも注力しているという点にあると思います。
まず学内教育については、大阪商業大学ビジネス・パイオニアコース(OBPコース)という特別コースを設けており、これが起業教育の核になっています。OBPコースは、入学後に1学年25名程度の学生を選抜し、独自のカリキュラムで鍛え上げていくコースです。本学の起業教育は、狭い意味の起業家育成だけでなく、起業家精神を有し経済社会で変革のリーダーシップを振るえる変革型の人材を育てることをねらいとしています。
また、学内の大きなイベントとして「大商大ビジネス・アイディアコンテスト」を10年近く実施しています。これは、全学的にビジネスアイディアを募り、2段階の審査を経て表彰するもので、毎年700件から800件の応募があります。
そして、その高校版が「ビジネスアイディア甲子園」という取り組みです。昨年度は全国から5,800件以上のアイデアが寄せられました。このほか、高校との連携に関しては、高校の先生と我々大学教員で「起業教育研究会」を設置し、教育技法に関する経験交流を図っています。数年前には『高校生のための起業教育ワークブック』というテキストを共同執筆で作りました。また、要請に応じて可能な限り高校への出張講義も実施しております。
地域社会との連携については、本学内に「大商大アントレ・ラボ」というインキュベーション施設があります。文科系では非常に珍しい取り組みで、社会人や本学の学生起業家が入居し、創業準備をしています。そして、入居者の事業に大学として出資する「ベンチャー投資制度」もあります。さらに、東大阪市のクリエーションコアの中に本学の「リエゾン・オフィス」を構え、産学交流の連携拠点としています。
この他、2008年度の教育GPに採択された「フィールドワークゼミナール」を学部教育として展開しております。これは、経済学や経営学の知識・スキルを活かして地域の問題解決を図っていこうという取り組みで、様々なテーマを掲げたゼミが設置されています。
ビジネスプランコンテストについて
【木谷】
別にローカルで新しいコンテストを作らなくても、学生は例えば東京のビジコンに行くとか勝手にやっている感じがします。我々も、レベルの高い学生はカリフォルニア大学バークレー校でインテルがスポンサーをしているビジネスプランコンテスト「IBTEC(Intel-Berkeley Technology Entrepreneurship)」に出すとか、そういう既存の一流ビジネスコンテストに出すほうが学生のやる気が起きます。そういうコンテストで上位入賞するとベンチャーキャピタルから実際に資金調達できますし、かえって近所でやってもやる気がわかないかなと。
【今里】
ほかの分野でいくと、私は政策系の学部、大学にいますから、京都だったら立命館大学、京都大学、龍谷大学、大阪府立大学にある政策系の学部・大学院で実施している「政策系大学・大学院 研究交流大会」というのが12月にあって、そこで政策提案コンテストを何年かやってます。大体3分の1ぐらいは立命館大学がどっと出して非常に積極的なんですけど、「ああ、ほかの大学はこんなことをやっているんだ」というふうに、交流することは学生とっても刺激になるでしょう。効果は非常にいいとわかっていると思うんですね。
【事務局】
例えば関西の私立で対抗試合とかっていう、そういったものはまだなされてはいないような状況なんですか。
【今里】
社会起業家の面では幾つかあるんですよね。例えばNPO法人edge(京都市)というところがあります。ここのビジネスコンテストは非常にシビアで、合宿も出ないといけないそうです。
【黒木】
先ほど言われた政策コンテストですが、立命館大学の学生が結構来ているということでしたが。
【今里】
ええ、それはもう。京都の大学で一月に1回か2回集まって、打ち合わせして、1年間準備してやっています。立命館大学の先生、各大学、座長は持ち回りでやっています。
【黒木】
上手く役割分担されていますね。
【木谷】
大学間連携でビジネスプランコンテストをやるとしたら、何かの予選としてやるのがいいですよね。たとえば優秀者はカリフォルニアに行ける、というのだったらいいです。というのは、IBTECのコンテストでは、中国から30件ぐらい応募があります。
【今里】
ああ、そうそう。インドとかもね。
【木谷】
で、優勝、準優勝は中国とインドなのですよ。日本からは東大のチームと奈良先端技術研究大学院大学のチームの2つしか応募しなかった。2つしか応募しなかったので、一応呼んでくれたんです。いろんな国から呼ばないといけないから。
【黒木】
アメリカの構図もおもしろいですね。スタンフォード大学は、スタンフォードで別にやっていますよね「Global Innovation Tournament」など。
【木谷】
ええ。それも定評のあるコンテストです。
【今里】
社会起業の面ではハーバード大学の3月初めにある「ハーバード社会起業大会」が有名。マイクロソフトとか企業がスポンサーになってます。
【木谷】
別にどこでもいいと思うんですけどね。
【今里】
でも1等賞300万円ですからね。
【木谷】
そうそうそう。企業がスポンサーしているから、結構いいですよね。
【古沢】
何について連携するのかということがポイントだと思います。1つ確実に言えるのは、先ほど今里先生もおっしゃられましたが、他流試合の場が必要だということです。また、我々の取り組みについて第三者の方から評価やフィードバックを受けたりする機会も重要です。やはり教育の一環として実施しているわけですから、教育の成果を客観的に測定できるような場が欲しいと思います。
フィールドワークについて
【古沢】
我々の起業教育ではソフトスキルの涵養に力を入れています。具体的には、リーダーシップやコミュニケーション能力、さらにはチームワークなどですが、これらは座学だけで養成することは困難で、プロジェクト型の学習が必要となってきます。その意味で、ソフトスキルを育むための良いプロジェクト案件にめぐり合いたいという思いは常に持っております。そうした案件を例えば経産省さんのほうでいくつか整理をしていただいて、我々にお与えいただければありがたいです。
【経済産業省】
それはモデル・ケースみたいなものですか。
【古沢】
案件ですね。例えば「ここの商店街はこんなことで困っている」あるいは「ある企業から新商品開発に関するこんな調査依頼が来た」といったことです。そういう案件を探してくるのは、教員にとって大変労力がかかることです。良い案件にめぐり合えれば、学習効果が上がるという感じがします。
【黒木】
先ほど言われた新商品開発案件というのは、大阪商業大学さんの場合、リエゾン・オフィス等の産学連携オフィスがありますが、そちらの職員等が探してくるのですか? 立命館大学も産学交流会などからアイデアを探してきているのですが、窓口職員が3年~5年のローテーションで交代をするので関係の承継が難しい。
【古沢】
同感です。
【木谷】
おっしゃるとおり、教育するときにフィールドに出てもらうのがほんとうは一番効果的だと思うんですよ。課題を与えてですね。ただ、やろうとしたときに、例えば労災のときどうなるかとかそういうことをいろいろ言われて、断念した経緯があります。ですからもし行政のお墨つきのある案件だったら、大学の職員でもそういう裏づけがあると多分大丈夫だろうと信じてもらえるのではと思います。
【古沢】
そうですね。おっしゃるとおりだと思います。現状では、職員が案件を拾い出し、先方と協議してプロジェクトの体制まで整備するというのは難しいと思います。
【木谷】
非常に難しいです。で、相手の企業も、そんな煩雑なことを言うんだったら必要ありませんということになってしまいます。
【定藤】
フィールドワークですが、地域で課題を見つけてやるというのは、確かにベンチャー教育とは若干理論的に違うところ がありますが、アントレプレナーシップを涵養する意味でも非常に有効かと思います。
ただ、我々のところも数年やっていますが、大学の先生がやっているとどうもうまくいかないですね。現在は、ビジネススクールを修了した社会人に非常勤講師として指導してもらっております。そうすると、地域の商店街ともうまくいくし、行政ともある程度うまくいきます。大学の先生がやるとなかなか上手くいかないことが実態なんですよね。(笑)
【新藤】
そのことに関してですが、今回、大阪市立大学の教員という立場でお話しさせていただいていますが、本校に赴任する前に私は、東京の大学で4年一貫の学部の起業家教育の立ち上げに携わってきました。そのときは正直、教員が起業教育に際して“体を張って”対処するケースもありました。例えば起業体験の授業の中で、学生が一般の顧客に物を売りに行くときに、なかなか売り方がよくわからなかったり、どう人に接していいかわからなかったりして、顧客からクレームが起きることもありました。それを誰が処理するかといったときに、やはり教員が出て解決にあたらなくてはならない。ただし現実には、そういう対処ができる教員とできない教員が当然出てきます。その当時、実務家出身の教員がプログラム全体の半数ぐらいおりましたので、そのチームを中心にトラブル・シューティングしながらプログラムを進めたことはあります。
ケース作成について
【新藤】
連携のテーマとして、この議題の中にあったケースの作成・共有化は、特に社会人大学院には必要な気がします。
書籍や雑誌記事として、ビジネス関係のケースは数多く出されておりますが、そのほとんどが大企業のケースであり、いわゆるベンチャー企業のケースは限られております。稀にケースがあってもほとんどは海外のものであり、それをどう日本の学生の教育に結びつけるか悩むところです。
私自身はケース作成に携わったこともありますが、ベンチャー企業の場合、難しい点もあります。ベンチャー企業では、取材から1、2年で状況がガラッと変わってしまい、カチッとしたケースにフィックスしにくいという問題もあります。そうした限界はあっても、ベンチャー企業のケースのライブラリーがあれば、アントレプレナーシップ教育には有効ではないかという気はしております。
【事務局】
関西でケースをつくるのに大学間が連携するという可能性がありえるでしょうか。
【黒木】
各大学の先生方の余裕の違いというのがあり、難しいです。
【新藤】
実際に教えるメソッドとの対応をどうするか、例えばそれをどう使っていくかというところのすり合わせも考えないといけないと思います。おそらく現状では、各教員がバラバラにケースをつくっているため、各自の教え方にマッチしたケースになっていると思います。そうした他の先生がつくったケースを自分のところで転用できるかというと、ちょっと難しいのかなという気はします。
【経済産業省】
先週(2010年9月26日)、起業家教育で有名なアメリカのバブソン大学のバイグレイブ名誉教授をお招きして、模擬授業をやったときも、先生がティーチングノートまで明らかにしてくださったところ、大学の先生もかなり出席していただいたんですが、「ケースだけではなく、まさにそこがすごく重要で欲しかったんだ。」というようなご意見も結構あったんですね。
【新藤】
教育メソッドをどう身につけるかという問題は大きいと思います。自分自身を含め大学で教えるようになる過程で、体系立った教育メソッドを習う機会はほとんどなかったように思います。おそらく各教員が、独自のやり方で教育しているのが実態ではないでしょうか。もちろんそれがいい点でもありますが、私自身は自己流になり偏ってしまっているのではと反省しております。
【事務局】
自身にはすごく使いやすいけれども、ほかの先生がこれを見るとちょっとやっぱり苦しいなということが出てくるということですね。
【新藤】
そうですね。ケースがモジュール化はされておらず、自分用に完全にカスタマイズされているのがネックです。
【事務局】
そこを、でも、もしすり合わせて共有できれば、量も2倍になり、3倍になりという、1つのライブラリー的なものが使えるようになって、将来的にはすごく有意義なものになってくるというところはどうでしょうか。
【新藤】
意義は大きいと思います。ただし、ケース1本書くのにも時間が膨大にかかりますので、そういう意味ではライブラリー化は難しい点もあります。
【黒木】
あと、ケースを書いたことと自分の論文成果では評価が違います。
【新藤】
その点も1つのボトルネックです。
【事務局】
京大のほうでは、会社を活発に起こされてますけれども、そういった会社を、時間を追って順次見ていき、ケースを作成していくとかはされてますか。
【木谷】
うーん、自前でケースをつくるのというのはすごく労力がかかります。できたら慶應義塾大学とかがつくっているのをそのまま使うとか、そっちのほうが効率的で楽です。ケースは、どういう経営の局面かというのですごく何通りも必要になります。そうすると、どうしてもアメリカなんか既存のものが何千本もあるので、今せいぜいベンチャー関係では数十本しかない日本のケースを自前で増やしても追いつかない。翻訳でやるか、他人がつくったものをやるかです。
また、ティーチングメソッドの開発というのもちゃんと教員の評価に入れていますよね、アメリカのビジネススクールは。要はベンチャーの研究というか、ベンチャー学みたいなものがあるわけじゃないので、教育というのが教員の評価にとって非常に大事だと。ケースなどの教材の開発、ティーチングメソッドの開発の開発を、ちゃんと業績として認められるというところが大分違うんじゃないですかね。
【新藤】
そうですね。
【木谷】
ベンチャー大事典みたいなのをつくってもしようがないので、やっぱりどこまでプラクティカルなものを成果として認めるのか、というので教育は大分違ってくると思います。本来プラクティカルなものが妙にアカデミックになっていると、起業教育という意味では役に立ちません。ちょっとそこを何とかせんといかんかなと思います。
【定藤】
起業家のケースステディを書いています。ビジネススクールでのアントレ教育を補完する意味でも、社会人大学院生に書いてもらっているんですよ。これは文科省の補助金なんかがもらえまして、「現代起業家の戦略的役割」というテーマで、大企業のトップへのインタビューを中心に十数本つくりました。そのときは我々教員がコーディネーターをやりながら社会人大学院生を中心に書いてもらいました。学部学生とは違って、実際にビジネスがわかっているわけですからポイントもわかるので、そういう面ではビジネススクールの卒業生も含めてやれる。しかし、彼らも非常に忙しいので、会社での業務との時間配分がポイントではあります。
【黒木】
社会人院生の活用というところですね。
【事務局】
どうしても社会人をはじめとした大学院生に頼らなければ、やはり難しいところ、労力的に苦しいところがある。
【定藤】
うまくいけば、自分のビジネススクールでの個人研究のための1つの素材として、データとして生かせますから、そういう活用の仕方もあります。かなり魅力的な企業、例えば堀場雅夫さんですとか、大丸の奥田さんとかに直接インタビューしてケースを書きますと意欲がわいてきます。参画する社会人院生やOG/OBが数人は集まりました。補助金がありましたので、若干の時給を出しました。このケースステディと映像は全部公開しております。(http://www.kwansei-ac.jp/iba/entre/index.html)
【事務局】
映像まで撮られたら、1つの形になってきますよね。
【定藤】
そうですね。宣伝になって恐縮ですが、全部映像でも公開されていますので、どういう局面で経営者はどのような意思決定をされたかというのを直接見て・聞いていただけます。社会人大学院生には非常に実践的でいいトレーニングの仕方だと思います。
【経済産業省】
他大学で使われるということも想定されていらっしゃるということですか。
【定藤】
文科省のプログラムでしたので、それを条件でやっています。
【黒木】
それはやはり大学院のGPみたいなモノですか。
【定藤】
そうですね。「現代企業家の戦略的役割」という表題で、専門職大学院・法科大学院等の支援プログラムでした。
【木谷】
ただでダウンロードできて使えると。
【定藤】
そうですね。
【木谷】
それはすばらしい。
【今里】
(iPadを見て)「シャープ液晶応用商品開発にみる辻氏の経営」とか、そういったものでしょうか?
【定藤】
そうですね。社会人大学院のトレーニングを兼ねてやると、我々の負荷は非常に楽になります。
学内連携について
【黒木】
ここにきて、うちは結局、経営学部で既存の経営学科といわゆるMBAと二つ体制になりました。お話を聞いていると、関西学院大学様もその様な状況が一時期あったということですが、今は一本化されていますか?
【定藤】
学部・研究科と専門職大学院であるビジネススクールの間にはかなりの溝があります。教員が全然違いますし、ほとんど兼任もしていませんので、当然違います。
【事務局】
学部との連携とかは、ほかの大学さんなどもあまりない感じなんですか。
【黒木】
そうです。大学で起業家教育プログラムを理工学部の学生や情報理工学部の学生にもずっと提供してきているのですけが、各学部担当者が変わるたびに、3年交代のたびに、なぜやる必要があるかをずっと説明し続けてきています。しかし、理工系の学生の基礎学力が弱って来ており、そちらの方を強化したいから余分な科目を教えたくない風潮が、一部の学部の中にあります。
【事務局】
経営学部だけじゃなくて、理工学部や情報学部、いろんなところの学生が入ることによって、お互い切磋琢磨するし、またいろんな違う意見、違う観点から物事をとらえることができるというようなメリットが出てくるんですけれども、大学の中での調整が大分難しいという意見は結構私も聞くのですが。
【今里】
大学の中で?
【事務局】
要は経営学部とかそういった学部以外の学部に対してです。
【今里】
縦割か。
【事務局】
そうですね。そこの部分というのはいかがですか。
【今里】
そりゃあ、もう、縦割りで外国のようですよ。言葉も通じませんし。
【黒木】
ただ、スタンフォード大学とかはそういうセンター的といえるようなところが2カ所ぐらいあって、そこにいろんな学部の学生が関わっています。
【事務局】
例えばビジネスプランをつくるとしても、ほんとうは大学の中でも、理工学部を持っていたら、その中にいっぱいシーズは埋まっているわけですよね。そこを上手く活用して、そこでビジネスプランを練ってすれば、大学にとってもすごくメリットになってくるし、新しい会社ができてくる可能性が十分出てくるんですけど。
【木谷】
学内でそうした困難を感じたことは特にないです。要は全学共通で履修できる科目数というのが一定数しかないので、それ以上とったら専門に差し支えるから、その範囲内であれば何をとってもよろしいということだと思います。源氏物語でもいいし、起業家教育でもいいし。だから、そういう意味では別に縦割りの壁は感じたことはないです。
ただ、実際に理系の人と文系の人が一緒にやらないと、起業としては全然おもしろいことが出てこないと思うんですね。例えば文系の人ばかりだと、どうしてもマッサージ屋とか外食になる。ほんとうにいいビジネスアイデアは理系の学生からちゃんと入らないと出てこないと思います。
学生支援について
【今里】
大学ではない学生レベルでは、大学の枠を超えて、もちろん学部の枠を超えて、自由にアソシエーショナルなネットワークをつくってベンチャーに乗り出していくケースというのはあります。私が一軒の町家を借りてシェア・ルームしていた学生たちのグループなんですが、京都大学、立命館大学、佛教大学、同志社大学等々のいろんな大学・学部から集まって、そこからいろいろなNPOを立ち上げたり、ソーシャル・ネットワーキングの新しいソフトを制作したりしてました。その中心人物だった学生は、慶應義塾大学SFCの環境情報研究科の方に進学して関西を離れてしまいましたけど、そうした動きは確かにあります。もちろん、そういう動きも大学がサポートをしていく、いや、大学主導というよりも、学生のそういう動きを我々が裏方になってサポートしてあげるということが必要かなと思います。
【黒木】
学生は単位をもらえないけど集まっているということですね。
【今里】
集まっているんです。
【定藤】
我々もビジネスプランコンテストをやるのに、学生のサークルをつくっていますが、なかなか学生が集まってこないというのが実態です。スタンフォード大学なんかですと、学生・院生がビジネスコンテストを全部企画して、ベンチャーキャピタリストを呼んできて、自分の発表をして、資金まで得て何とかというのがありますけど、とてもじゃないけどそんな風にはいきません。文化系主体の学生という点もあるのですが・・・。ビジネスプランコンテストを運営する学生組織がなかなかパワーアップしないので、他の大学の学生さんと連携してパワーアップすることも取り組んでおります。
【古沢】
難しいのは教える側のシーズ、言い換えると、どの教員が担当するのかということです。ですから、他の専門科目と同じような形では扱えないし、起業教育の負荷は普通の科目の1.5倍から2倍以上くらいあると思います。カリキュラムとして絵は描けても、それをこなすためのシーズを大学の中でどう構築していくか、獲得していくかということが課題であると思います。
また、先ほど定藤先生からもお話がありましたが、例えばベンチャークラブといった組織は、作ってもすぐに沈滞化してしまう傾向があります。野球部だったら、普段からキャッチボールやノックなどやることがあります。しかし、ベンチャークラブは部室に集まっても、特段何もやることがありません。そこで、具体的な案件や目指すべきコンテストなど目の前の見える目標が必要だと思います。
【黒木】
その点、立命館大学のベンチャー系クラブでは、商品開発をプロジェクトベースでやって来ました。要するに、ベンチャー企業を起こす前にまず商品開発を勉強させようと考えて、お菓子、次がお酒、その次またお菓子という感じでやって来ました。そういったことに関わった学生の意見が、今ある産学協同アントレプレナー教育プログラムの基礎になっています。
正規の科目になる前に、こういった商品づくりでアントレ教育の基礎を学んだ学生達がベンチャー企業に勤務したり、大手企業でプロジェクトの責任者を現在務めているのですが、結局、過去の商品開発の際、教員が3件中2件はかかわっています。要は自分の研究をほったらかしているというのが現状になってしまっています。もちろん学生は、色々学べておもしろかったようですが。
【新藤】
以前、学部教育をやっていたときにちょっと頭が痛いケースとして、起業教育を受けた学生が卒業後に大企業に入社してしまうケースがありました。一方、非常勤講師としてビジネスプランの授業を教えていた別の大学の学生が、引き留めたにもかかわらず会社を立ち上げたこともありました。そういう経験から思うのは、会社を起こすような人材は、1つの大学の中に固まっているのではなく、いろいろな大学に散らばっているのではないかということです。1つの大学でビジネスプランコンテストのような枠をつくればそこにそうした人材が集まってくるのだろうかというのは、4年間学部で教育していて疑問に思ったところです。
【経済産業省】
少し長期スパンな視点で、その実績が本当に出るかどうかを検証するのは簡単ではないと思うのですが、例えば、大学や大学院で起業家教育を受講したものの、結局は大企業に就職してしまう。しかしながら、やはり基礎に起業家教育を受けていると、将来的に大企業からスピンオフとかスピンアウトする可能性も出てくるのではないかなと思うのですが、その辺はいかがですか。
【黒木】
最初に立命館で出会った学生達がちょうど今、三十一、二歳になっていて、卒業時にP&Gに勤めた始めた学生は、今製薬会社に転職したり、電通やドコモに就職した連中でたまに集まっていろんなビジネスの話をしたりはしているのですよ。でも、立命館大学のびわこ・くさつキャンパスだけで毎年約5,000人の卒業生がいるのですが、10年間見ていて、学生時代から会社を起こすあるいは起すための行動する者は、年間2、3名ほどです。ひょっとしたら陰に隠れてやっているかもしれませんが。他大学、例えば京都大学さんは学生達の中にそれだけの何か、反骨精神があるのか、学生時代から会社を起こす人達が毎年10名ぐらい出ているように外から見えます。
【木谷】
日本の中では多いほうかもしれません。それでも3,000人とか4,000人のうちの10人なので、微々たるものですね。実は大学で起業の種を見つけて創業するなんて、外国でもあんまりない。大体平均30歳ぐらいですね。いろんな企業で経験を積んで、その中で起業する。だから、おっしゃるとおり、それが将来に生きるようなスキル、マインドセットというのが大事だと思います。
【定藤】
私は、教員になる前にガス会社に二十数年勤めていました。一端大企業に入ったら1つの部門の歯車にしかすぎないのが実態です。経営全体を見ようと思ったら何十年かかるんですね。20年、30年。子会社に出向すれば少しは経営全体を見渡せますが。
ベンチャーというのは、小さいながらでも事業全体を見渡して、新しいアイデアを事業化するための資金を集める、お金を借りる、組織をつくる、計画書をつくる・・すべてをいっぺんにやらなければいけない。この起業家教育をしておくと、大企業に入ってからも新たなイノベーションに結びつき確実に役に立つと思います。大企業の中で自分の夢が果たせなかったら、スピンアウトもきるわけです。そういった意味合いでも起業家教育は必要です。日本の企業、大企業を底上げするためにも、やっぱり大学のとき、あるいは小学校・中学校でもやっておく必要があると確信しております。
【黒木】
今アントレ教育を受講している学生達には、大企業内で将来的に社内ベンチャーとか新規プロジェクトを担当できるようになってほしいと、実際に講義の中で話しています。
【新藤】
おそらくアントレプレナーシップ教育といった場合、2つレベルがあると思います。1つは、全く社会人経験のない学部生に起業家精神を植えつけていくレベルであり、もう1つは、実際に会社を起こしてしまっている経営者に経営スキルを教えていくレベルです。創造都市研究科でやっているのは後者になると思います。例えば、無我夢中で会社を立ち上げて10年ぐらいたって、売上も一的規模になった。そうした中、銀行や取引先といったステークホルダーと話したりしていると、今まで我流でやってきたことで、よくわからないところが出てくる。そこで壁にぶち当たって、やっぱり本気で経営を学ばなきゃだめだなと思って門をたたくというパターンの方が、創造都市研究科の学生にはいらっしゃいます。そうした方々はもともと経営感覚があるので経営学の理論をどう自分に取り入れていくかを自然と考える。だからこちらでは、意識の面ではなくてスキルの面を中心に教えるというスタンスになります。
【事務局】
市大では、全体的には最初の段階から、起業意識は皆もう持っているという状況だということですね。
【新藤】
そうですね。社会人大学院なので、そういう方を中心に来て頂いているということですね。
ファンドについて
【今里】
今、コンテストの話がトピックだったんですけど、私は、コンテストもいいけど、実際起業したいという意欲を持っている、あるいはある程度のプランというかな、未熟だけどもプランを持っている、そういう学生も行けと後ろから背中を押していくためにはやっぱりファンドが必要なんじゃないかと思いますね。うちはソーシャル・イノベーション研究センターというのを大学の機構としてはつくりましたけど、今度はソーシャル・イノベーション・ファンドを設けようと計画しています。
そのきっかけは、私と同年で共にソーシャル・イノベーション研究コースの教育研究に従事している新川教授が還暦を迎えるのですが、あるとき酒を飲んでいて、有意義な還暦を迎えよう、ありきたりの還暦祝いは要らないけれども、有益な社会貢献的な還暦祝いだったらよいだろうということになりました。そこで、自分たちに還暦祝いを献呈するというのも変ですが、「新川さん、じゃ、お互い100万円ずつ出してファンドをつくろうか」と盛り上がって、呑んだときの約束は守るというのが私のモットーですから、それでソーシャル・イノベーション・ファンドを作ることになったわけです。
実際、起業を考えている学生が「10万円あったら、先生、やります」とか言ったりするんですね。たとえば、つい最近の話ですが、新規就農したいという学生が、「いやあ、先生、産直ショップに僕のつくったナスビを持っていきたいんだけど、出店料の6万円がありません」と言うので、「よし、貸したる」と貸して上げました。すると、ナスビが売れるようになって収益が上がるようになっていったわけですね。だから、やっぱりお金の力というのは大事だなと思います。コンテストもいいけども、実際に金を出して持っていくというような仕組みとしてのファンド、こっちも大事やなと思います。
【木谷】
起業するのにそんなにお金は要りませんからね。
【今里】
そうですね。
【木谷】
せいぜい何十万円。
【今里】
何十万円、それがないんですよ、若い者はね。
【木谷】
うん、そのとおりですね。
【事務局】
そうですね。ファンドがない今は、どちらかというとコンテストに出て、コンテストの手元資金で起業することが多い。
【今里】
そうそう。旅のお手伝い楽楽という社会起業で有名になったわが大学院生の佐野恵一君の場合も、ビジネス・コンテンストで確か600万円ほどの賞金をもらったのが起業のきっかけになったと記憶しています。
【定藤】
関学の場合は、学生が家庭教師の会社なんかをつくるとか、そういうのはあります。また四、五人の学生が不動産仲介ビジネスをやっていたケースがあります。そのときは、私も100万円ぐらい投資して、エンゼルから400万円ぐらい集めまして、つぎ込んでやったのですが、3年で完璧にだめになりました。
【木谷】
少なくとも登記費用ぐらいは出してあげたいですね。20万円とか。
【定藤】
ファンドもエンゼルファンドとベンチャーファンドで大分違いますので、我々は池田銀行さんと一緒になって、小さいですけど1億円のファンドがあります。これがなかなか使い切れないですよ。もっと使いやすくて、少額でもいいですからエンゼル的に使えるファンドがあると随分違うなと思いますね。
【木谷】
京大のベンチャーファンドは45億円です。
【定藤】
ありますよね。
【木谷】
数千万円以上の単位での資金投入なのでどうしても案件数は限られます。(注:平成23年度より、少額のアーリーステージ投資も開始予定)
【事務局】
ニーズが少ないんですね。
【定藤】
同感です。
【黒木】
バブソン大学には、OBの寄附金でつくったファンドがあります。そのファンドを学生達は、プロジェクト(新事業)に対して使って良いのですが、失敗したら自動的に卒業時に失敗した金額分だけ新たに補填されて、儲けたら、儲けた分は学生が気に入っている外の団体に寄附するというもので、3万ドルの線はちゃんと維持するように設計されています。
【木谷】
そういう基金をやはり自分でつくるのがいいんじゃないですかね。企業から寄附とかもらって。そういう感じがしますけど。こっちのほうが使いやすい。
【黒木】
アメリカでしばらくの間、教育に関わってきて見えてきたのは、アントレプレナー教育自体にOBから5億とか10億、ぽんとそこだけで寄附金をもらっていて、そのファンドを基にした利息で自由に活動ができる仕組みがあります。もちろん大学本体は本体で何百億円という寄附金集金活動をされていて、そこがもう違います。
【事務局】
国内で一番難しいところですね。
【黒木】
中国の大学とかにOBファンド制度がすでにあると聞いています。まだ調査不足なのですが、アメリカの大学時代の同級生(中国の大学教授)が関わっているとメールしてきます。中国の大学は資本主義の本質“儲ける”ために、また市場競争の本質“生き残る”ために、色々なことを積極的に取り入れている。
【今里】
韓国なんか、社会起業ですと、社会起業促進法とか、そういう法律が3年前にできています。
【経済産業省】
韓国にはベンチャーの認定制度があって、認定されると税制の優遇などの様々な恩恵が受けられます。
【新藤】
以前インタビューに行った際には、理工系の大学院の優れた研究をもとに創業したベンチャー企業で、経営チームが兵役免除になったという話も出ました。
【木谷】
SBIR(中小企業技術革新制度:Small Business Innovation Research)みたいなものですね。
【新藤】
それに近い制度もあると聞いています。
外部講師について
【事務局】
学生の中で、私ども、最近、起業家候補の方とか起業された方とかに話を聞くと、やはり外部講師の生の声というのがすごく参考になって刺激を受けたという声は非常に多いんです。今現在、社会人大学院のほうでもおそらく人を呼ばれたりはしていらっしゃると思うんですけれども、どういった方を呼ばれていらっしゃいますか。
【黒木】
立命館アントレ教育の方は、財団法人大阪科学技術センターのATAC(Advanced Technologist Activation Center)というところを頼っています。講師には、大阪で会社を起こされている方々、あるいは大企業でプロジェクトリーダーをやられて来た方々がいます。滋賀県のベンチャー企業の方々との関係はまだ弱いでのすが、ようやくこの2年、3年で、滋賀県のベンチャー企業さんをゲストスピーカーに堂々と呼べる体制になりました。起業家教育を始めた5~6年前は、地元の滋賀県関係者へのアプローチはゆっくりで、一方、大阪の方は、友人が大阪青年会議所のメンバーであった関係で、一つ返事で「手伝いますよ」と言ってくれた人達がいる、という差がありました。
【古沢】
本学には「地域社会と中小企業」という公開講座型の授業があります。東大阪市に立地しているという特性を活かして、地元の中小企業の経営者を講師に招聘しています。毎年十数人の経営者にご講演いただいています。
【黒木】
謝金等は?
【古沢】
特別講師的な扱いにしていると思います。
【事務局】
市大さんはどうですか。
【新藤】
こちらのほうは、半期で10人強、毎週ワークショップという形で講師を呼んでいます。講師は関西在住の方に限っているわけではなく、必要に応じて東京から呼ぶ場合もあれば、北海道から呼ぶ場合もあり、場合によってはアメリカや中国から呼ぶ場合もあります。謝金の問題があり、海外の方に関しては日本までの旅費はとても出せませんので、日本への出張のついでに来ていただくことになります。講師に来ていただく際には教員の個人的なネットワークで呼ぶというのがほとんどですが、毎年異なる学生の関心に合わせ教員自ら必要な方に直接電話して、講師を頼む場合もあります。
【定藤】
関学の場合も学部に、経済学部、商学部、理工学部などで、実務家、経営者の方に来ていただいて講義をしていただいているのですが、担当されている先生の個人的ネットワークで、同窓を中心にして話に来ていただいているものも多いと思います。大学院のほうも、ケーススタディーで扱った起業家や経営者の方に来ていただいてりもしています。今、事業継承が話題になっていまして、我々もこの分野での講座をやろうと思っているのですが、大阪産業創造館と提携しまして、講師等の派遣、連携講座をつくろうとしています。
【黒木】
同志社大学さんは事業承継学会をつくられていますね。
【今里】
あれは、私がいる総合政策科学研究科の技術革新的経営という専攻があって、そこの先生たちが熱心に事業継承をやっています。私の専攻はまた違うんですけど、京都はそういう伝統的な工芸とか多いですからね。
【事務局】
京大は。
【木谷】
我々のところは結構いろんな人脈・つてをたどって人を呼んでいます。ディー・エヌ・エーの南場さんとか、DCMというシリコンバレーのベンチャーキャピタルのパートナーしている伊佐山さんとか、ぐるなび会長の滝さんとか、ライフネット生命の岩瀬さんとか出口さんとか、スター・マイカの水永さん、エムオーテックスの高木さんといった方々に来ていただいています。
【黒木】
先生の個人的なネットワークですか。
【木谷】
私と、我々の寄附部門所属の教員のネットワークですね。
【今里】
私のところは、社会企業的なところですけども、社会起業家だけではなくて、社会企業的な要素が強い企業ですね。例えばアミタという廃棄物再生の会社の熊野英介さんね。それから、農業部門でナチュラルアートという、独立して今190億円かな、事業をやっている鈴木誠さんという人。それから、ビル・トッテンさんという青い目の日本人で有名なアシストという会社を立ち上げた方ですね。そういう企業。それから、エナジーグリーンの飯田哲也さん。割方よく来てもらって話をしていただいています。これは私の個人的なネットワークということになります。
【事務局】
割合的にやはり関西地域の方を呼ぶほうが圧倒的に多いんでしょうか。もちろん、東京から呼ぶと、交通費とかそういった問題もすごく出てくると思うんですけど。
【今里】
京都に来たときに来てねという感じ。ファンドがあるときはいいんですよ、そういう外部資金を潤沢に持っているときは何ぼでもということになりますけど。
【事務局】
あと、やっぱり授業の中で上げるテーマが関西の中の身近な方であれば、学生に対しても非常に身近に感じるとか、そういったこととかは特にないですか。
【今里】
というか、学生を連れていくことね。呼ぶんじゃなくて、現場に連れていくことも大事です。
【事務局】
逆に連れていく?
【今里】
田舎につれていって、限界集落なら限界集落でインターンさせるといったことです。私の学部ゼミの学生の例ですが、大徳寺のある塔頭で少し修行のまねごとなどしてみらんかと寺に入れたら、本格的に坊主になりますと言い出して、逆にこちらが慌てたりしています。(笑)
会社等の見学会について
【事務局】
工場見学とか、そういったものとかというのは取り入れられていらっしゃいますか。
【古沢】
経営の現場を見ることは非常に重要ですので、工場見学も含めて企業への実地調査は頻繁に行っています。但し、我々教員がすべてお膳立てするのではなくて、例えば数人によるグループ研究のような場合は、学生にアポ取りからやらせています。先方に趣旨を説明し、必要だったらメールや文書でやりとりをさせます。そうしたことからもソフトスキルを涵養していこうと考えています。ビジネスパーソンに大学へ来てもらうよりも、学生が外へ出て実地に見聞する方が効果的だと思います。
【黒木】
東大阪はすぐ近くにたくさん企業さんがいらっしゃる。
【今里】
八尾やら、東大阪、生野って確かに企業数が多い。
【古沢】
外部講師の講演をお伺いする場合は、先ほど申し上げた教員側のシーズ、すなわちライブのケースをさばく能力が問われると思います。講師の話は迫力があったが、結局何がポイントなのか分からなかった、というようなことにならないようにさばけるかどうかが教員の腕の見せどころとなるでしょう。
【今里】
東大阪だったら、立命館大学の大学院生が今うちの後期に来たんですけど、彼なんか東大阪、特に八尾の中小企業にものすごいネットワークを持って、ずっとヒアリングを800件か900件やっている。一人一人と知り合いですよね。ああいう人材がいるというのはある意味貴重というかな。彼に「こういうプレスですごいところ知ってる?」と言ったら、「ああ、知ってますよ」とすぐ言いますからね。
【事務局】
そういった例えば見学とかも、1大学じゃなくて共同で見学とかいう可能性ってどうなんでしょうか。なかなか、ちょうど授業の流れの中でうまく合致させるようなすり合わせとかは難しいんでしょうか。
【今里】
例えば同じ大学でも経営学部とうちの政策学部と少し畑が違う。学生もね。一緒にするというのは非常におもしろいかもわからない。
【古沢】
何かのきっかけづくりとして、こんなユニークな企業がありますという情報をご提供いただくことは有難いと思います。
【事務局】
そういう旗振り役とか、きっかけをつくる主体というのはなかなか難しいというところが正直あるんですよね。一緒に合同で見学に行きましょう、こういうおもしろい会社がありますとか、皆さんどうでしょうかと、そういったものというのは。
【新藤】
学会などでの教員間のネットワークはあるので、教員同士が同じような教員体験をした上で、ゼミや授業を合同でやりましょうかというのはよくあるように思います。関西に来たのが今年の4月ですので、こちらの状況はまだよくわかりませんが。
【今里】
日本人の学生はね、関西なら関西、関東でも同じだけど、一緒にしたらあんまり効果がない、刺激ってないんじゃないかと思う。むしろ韓国とか呼んできてやったほうがいい。違うでしょ、向こうの韓国の学生というのはみんな社長になりたいと言うしね。日本人だったら100人いて1人ですよ、社長になりたいのは。そういうメンタリティーというか、精神風土の違いとかをリアルに感じさせてもらったらどうかな。
それから、起業家教育に限ったことではないですけども、特に政策系学部なんかはそうかもしれませんが、政策と言いながら、政策的な課題は外で起こっているわけでしょ。「踊る大捜査線」の映画じゃないけど、事件は現場で起こっているので、教室でいくら政策を教えたってあんまり意味がない。現場に連れていかないといけないのに、ほとんど現場に行くことがない。私はもともと行政学というのは本来足で考える行政学で、足で考えてこいとみんな現場に行かせるんです。例えば東大阪とか八尾とかすごい中小企業のメッカがあるんだから、そういうところに学生を連れていって見させるということが重要ですね。政策だったら中小企業政策を現場から考えてみるとか、そういう教育をやりたい。
【古沢】
大阪商業大学は(財)関西生産性本部の賛助会員になっていて、その関係で、様々なインタビュー調査や企業訪問のアレンジをお願いしたり、あるいは生産性本部の講演会等に学生が参加したりしています。また、去年からは、生産性本部と連携してOBPコースの学生の社会人基礎力を測定するプロジェクトをスタートさせました。それは企業の採用担当者に学生のアセスメント面談をしていただくという取り組みです。
【黒木】
内輪話になってしまいますが、例えば滋賀県の結構中堅どころの伸びている企業さん、その地元自治体(市)もそして隣接自治体(市)とかも応援しいる企業です。しかし、中小企業を取りまとめる団体にとっては、考え方が違い連携を拒まれるケースもあり、結局、会員企業に1社1社当たっている、故に大学側の人手不足になることもあります。
【事務局】
企業訪問一つにしても、事務局機能の部分をどういうふうに担っていくか、そこの機能をどこが実施していくかというところは一番多分課題になるのかなという感じですね。



















