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法政大学 『ハイテク・ベンチャーの経営戦略』

学部・学科/研究科名 法政大学 経営学部 ・経営学研究科ビジネススクール
講座名 ハイテク・ベンチャーの経営戦略
対象者 経営学部生、ビジネススクール院生
担当教員 田路則子・児玉靖司

講座の目的

起業やスタートアップへの就職をキャリアの選択肢のひとつに考える学生に、急成長する可能性がある潜在力の高いスタートアップの経営ノウハウを考察する機会を提供する。鍵となるのは、グローバルに通用するビジネスモデルや技術、経営チームの編成、資本政策である。また、起業環境や成長モデルの国際事例の教材を使って学んだ後で、起業家のゲスト講師に講演をしてもらうことで、生きた教材を提供したい。ゲスト講師は、日本および米国のケースに登場した創業者を予定している。

講座スケジュール

日程 日付 講座内容
平成22年6月 5 ハイテク・スタートアップの経営と日本の起業環境
12 日本の起業支援制度とファイナンス
19 米国シリコンバレーの起業環境と事例
26 日本の実例
平成22年7月 3 英国ケンブリッジ地域の起業環境と実例
10 台湾新地区地域の起業環境と事例
17 日米の起業環境比較(遠隔セミナー)
   
平成22年9月 21 日本とシリコンバレーをつなぐプロフェッショナル
22 米国スタートアップ訪問
24 日米遠隔セミナー
   

実施報告

第1回 ハイテク・スタートアップの経営と日本の起業環境

講義開催日 平成22年6月5日1,2時限
開催場所 法政大学 外濠校舎407
担当教員 田路則子(法政大学教授)、八木橋泰仁氏(税理士)
講義の内容 田路から、オリエンテーションを行った。
ハイテク・スタートアップ、アカデミック・スタートアップ、民間スピンアウト等用語の定義を解説し、ベンチャー・ファイナンスや成長要因について説明するとともに、日本と起業先進地域(米国、英国、台湾)の起業環境の概観を説明し、導入の知識を説明した。
税理士の八木橋氏から、クライアントの事例を紹介してもらい、日本の起業家の実像を理解した。事例は、システム会社、ネット、飲食店、通販等である。
担当教員所感 学部生50人、大学院生15名の参加があった。
起業に関心のある学生と、大企業の投資先としてのスタートアップを理解したい大学院生が履修している。
税理士で起業家でもある八木橋氏の講義に熱心に聞き入っていた。
使用教材等 なし
教材・配布資料、その他 ハイテク・スタートアップの経営と起業環境.pdf

講座風景

第2回 日本の起業支援制度とファイナンス

講義開催日 平成22年6月12日1,2時限
開催場所 法政大学 外濠校舎407
担当教員 鹿住倫世氏(専修大学教授)、五十嵐伸吾氏(九州大学准教授)
講義の内容 日本の起業支援制度を、鹿住倫氏から、起業家を取り巻く環境を五十嵐伸吾氏から解説した。
日本の起業環境の課題は次のとおりである。
・ベンチャー・ファイナンス
・労働市場の流動性の低さ
・出口戦略の非選択性
多くの課題があるが、起業環境の改善には長い時間が必要であり、次週以降の他国の例でそれを理解していくことの意義を説いた。

担当教員所感 インキュベーション施設やファイナンスに対する質問が出た。
実務に基づく質問もあり、社会人大学院生による議論が活発化した。
使用教材等 教科書「ハイテク・スタートアップの経営戦略~ オープン・イノベーションの源泉」  田路則子・露木恵美子編著 東洋経済新報社
教材・配布資料、その他 講座風景

第3回 米国シリコンバレーの起業環境と事例

講義開催日 平成22年6月19日1,2時限
開催場所 法政大学 外濠校舎407
担当教員 田路則子
講義の内容 米国シリコンバレーの起業環境(田路則子、児玉靖司)と、米国シリコンバレーのケーススタディ(田路則子)の講義を行った。
教科書の4事例の戦略を検討した。いずれも、グーグルのようなホームランではないが、何度も起業をくりかえしてヒットを重ねるシリアル・アントレプレナーの存在が特徴であることを解説した。
また、シリコンバレーのVCの活動、起業家像、弁護士や会計士の支援が大きく起業活動を支えていることを説明した。
担当教員所感 日本人の起業家が公開まで育てたTechwell社の戦略と組織づくりは参考になったようだ。
シリコンバレーは世界唯一、日本と比較することはできないが、買収対象としてのスタートアップの存在価値を理解する上で参考になったという声が社会人院生から挙がった。
使用教材等 ・教科書「ハイテク・スタートアップの経営戦略~ オープン・イノベーションの源泉」 田路則子・露木恵美子編著 東洋経済新報社
・PPT資料「米国シリコンバレー地域 シリアル・アントレプレナーの事例」(田路則子)
教材・配布資料、その他 米国シリコンバレー地域 シリアル・アントレプレナーの事例.pdf

講座風景

第4回 日本の事例

講義開催日 平成22年6月26日1,2時限
開催場所 法政大学 九段校舎(遠隔教室)
担当教員 新藤晴臣氏(大阪市立大学准教授)、五十嵐伸吾(九州大学准教授)
講義の内容 アカデミック・スタートアップの事例として、バイオテクノロジーの「アンジェスMG」「セルシード」を、民間スピンアウトの事例として、「エスエムエス」の事例を解説し、3社の成長のプロセスの分析、財務面、経営チーム、市場ニーズの観点から行った。
あわせて、日本の起業環境について金融市場からの説明と、アカデミック・スタートアップを支援する法律制度の歴史的変遷の説明を行った。
担当教員所感 法律制度の解説を詳細に行うと多大な時間を伴うので、事例を理解するために抑えた。これはなかなか難しい。
技術の説明は難しいが、それよりも、市場ニーズとのマッチングと戦略の展開の流れの中で解説した。
バイオテクノロジー業界で働く社会人院生からは活発な質問があった。学部生には、インターネット・ビジネスの事例がわかりやすかったようだ。
使用教材等 ・教科書「ハイテク・スタートアップの経営戦略~ オープン・イノベーションの源泉」  田路則子・露木恵美子編著 東洋経済新報社
・PPT資料「日本のケーススタディ(アカデミック・スタートアップ)」(新藤晴臣氏)
教材・配布資料、その他 日本のケーススタディ(アカデミック・スタートアップ).pdf

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第5回 英国ケンブリッジ地域の起業環境と事例

講義開催日 平成22年7月3日1,2時限
開催場所 法政大学 九段校舎(遠隔教室)
担当教員 露木恵美子氏(明星大学准教授)
講義の内容 米国シリコンバレーにある法政大学のサテライトオフィスと結び、講義代表者の田路がサポートする形で講義を行った。
1980年代にケンブリッジ現象として有名になった、ケンブリッジ大学発のアカデミック・スタートアップ輩出のシステムの解説を行った。
コンサルタント会社、VC、エンジェルがケンブリッジ地域で果たした役割は大きい。
3つの事例、CDT、アステックス、バンゴーについて、ケースワークをグループごとに行った。創業者、経営チーム、技術、事業モデルについてまとめて、発表した
担当教員所感 グループワークによって、各社の特徴を議論すると発見が多くあったようだ。
シリアル・アントレプレナー、マネジメントチームの専門性、従業員数の推移と成長の関係、ライセンスビジネスまたは製品提供する事業構造のどちらか、アラインスの重要性等々。
使用教材等 ・教科書「ハイテク・スタートアップの経営戦略 ~ オープン・イノベーションの源泉」 田路則子・露木恵美子編著 東洋経済新報社
・PPT資料「英国ケンブリッジの起業環境と事例」(露木恵美子氏)
教材・配布資料、その他 英国ケンブリッジの起業環境と事例.pdf

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第6回 台湾新地区地域の起業環境と事例

講義開催日 平成22年7月10日1,2時限
開催場所 法政大学 九段校舎(遠隔教室)
担当教員 佐藤幸人氏(アジア経済研究所)、鹿住倫世氏(専修大学教授)
講義の内容 米国シリコンバレーにある法政大学のサテライトオフィスと結び、講義代表者の田路がサポートする形で講義を行った。
佐藤氏から、台湾の新竹地域振興の歴史をITRIの設立と変遷、そして生まれてきたスタートアップ(UMCやTSMC)の事業ドメインの変更について、詳細な解説を行った。
鹿住氏から、教科書の二つの半導体企業の事例について、経営チームの生成、大学やITRIとの連携の重要性、起業ネットワークについて分析が報告された。
担当教員所感 台湾の事例が初めての学生には内容が難しい面が多々あったと思われる。大学院生レベルでなければ、制度の理解は難しかったかもしれない。佐藤氏の著作等を含めて、追加の情報収集が全体の理解には必要であろう。
使用教材等 ・教科書「ハイテク・スタートアップの経営戦略~ オープン・イノベーションの源泉」  田路則子・露木恵美子編著 東洋経済新報社
・配布資料「台湾の産業発展メカニズムと工業技術研究院」(佐藤幸人氏)、「台湾 新竹地域のケーススタディ」(鹿住倫世氏)
教材・配布資料、その他 台湾の産業発展メカニズムと工業技術研究院.pdf

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第7回 日米の起業環境比較

講義開催日 平成22年7月17日
開催場所 法政大学 九段校舎(遠隔教室)
担当教員 James Prenton氏(米国弁護士), 山内善行氏(QLife社長)
講義の内容 米国の起業環境を、起業支援サービス提供を仕事とする法律家から解説してもらった。教科書に書いてあるような起業支援の実態を、実際のクライアントのケースも挙げながら解説があった。
日本のWEBビジネスについて、二度の起業経験を持つ創業者から講演があった。ビジネスモデルは実行しながら変更が加えられ、収益構造が変化していく。それまで存在しなかった新しいサービスは未知のリスクと無限の可能性がある。
起業環境は米国のように整っているわけではないので、経営チームは自力で全てを行うことになる。
担当教員所感 米国の事例はIPhoneアプリのビジネス、日本の事例は病院のクチコミサイトであったため、学部生にもわかりやすい講演であったようだ。
米国の事例は、日本人が米国にわたって起業した事例であったため、ハードルの高さやリスクをどう認知したかに関する質問があったが、むしろ、米国にわたったほうが起業活動はスムーズになったという答えが返された。活発なネットワーキングを利用した情報収集が行いやすいこと、共同経営するパートナーを見つけやすいこと、外国人を受容する文化があること等が指摘された。
日本の事例は、経験のない業界における起業が可能であることを示しており、ビジネスモデルの変遷が細かく紹介されたことは興味深かった。
使用教材等 ・講師のPPTファイル(非公開)
教材・配布資料、その他 7月17日(米国16日)の講演者紹介.pdf

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第8回 日本とシリコンバレーをつなぐプロフェッショナル

講義開催日 平成22年9月23日
開催場所 法政大学市ヶ谷キャンパス及びHosei Univ.Research Institute,California
担当教員 サンブリッジ代表アレン・マイナー及び中町昭人
講義の内容 中町氏からは、シリコンバレーの起業環境を、特に法律等制度面からの解説があった。また、氏自身が米国に渡り、ロースクール卒業後、国際弁護士としての経験を積んできた苦労や努力は、グローバル・ビジネスを手掛ける困難と意義を生々しく伝えた。
マイナー氏は、日本企業および日本人がイノベーションの担い手として貢献できるかどうかに関する潜在力について、調査に基づく分析を示した。研究開発費の投入、登録特許数ともに潜在力は十分にある。しかしながら、起業数は、1950年代から一貫して下降傾向にある。ただ、IPOの数そのものは少ないわけではなく、むしろ、バイアウトが少ないことのほうが出口の可能性を低めている。
担当教員所感 日本と米国の両方にスピーカーがおり、講演後はパネルディスカッションを行った。会場からの質問を拾うことによって、学生の参加も見られた。グローバルビジネスを担うスピーカーの応答は、学生に有益であったようだ。
まず、国際弁護士の日米における起業支援の比較があり、専門家としての客観的な分析が示された。次に、グローバル企業オラクルの経営とその後立ち上げたVCの経営という豊富な経験を持ちながら、日本における新規事業や起業を鼓舞する活動は大きなインパクトを与えた。
使用教材等 ・無し
教材・配布資料、その他 008_1008_021

第9回 米国視察

講義開催日 平成22年9月20日~24日
開催場所 カリフォルニア州 シリコンバレー地域
担当教員 田路則子・児玉靖司
講義の内容 9月21日 日本発
 同日午前中 サンフランシスコ空港着
 テスラ・モーターズのショールーム&スタンフォード大学等見学
9月22日
 10時30分 インキュベーション見学(Plug&Play)
 13時~15時 he CEO of Magic Solver &日本人メンター金島氏レクチャー
9月23日
 11時40分 Google見学
 15時30分 法政のアメリカ研究所にゲストを呼んで講演 (船木氏Smashblooth)
 17時30分 遠隔セミナー実施(市ヶ谷と結ぶ)
9月24日
 10時00分 FX Pal(富士ゼロックス)の研究所見学・サンフランシスコ市内散策
9月25日 帰国
担当教員所感 21日:テスラモーターズはトヨタの投資の事例もあったため、今日的であった。田路ゼミナールでは、ケースとして事前に使っていたこともあり、学生にはなじみがあるものであった。ソーラーカーを目前に、ユーザーの評価について、案内役の方から説明があったことは、グローバル市場を肌で感じれたようだ。

22日:Plug&Playは、VCもサテライトオフィスを置き、イベントや勉強会の開催に熱心なIT企業が多く入居するインキュベーションである。Googleも卒業生である。日本のインキュベーションにはないソフト面でのサポートの充実ぶりを強調した。
入居企業のMagic solverは、学生になじみの深いiPhoneアプリの開発を行うスタートアップである。フランス人で英国のMBA卒生の創業者が説明する姿も、グローバルビジネスのメッカであるシリコンバレーを象徴している。
金島氏は、ポスドクで渡米中に、自らの技術をもとに、バイオのスタートアップを起業して売却した。アカデミック・スタートアップの実例としても、日本人が米国で成功した実例としても、含蓄ある講演であった。

23日:Googleの施設を見学して、有名なランチをいただいた。キャンパスと名乗る施設は、日本のオフィスとはまったく異なる、住んでも楽しい仕事場であった。
午後の船木氏との歓談は、大学卒業後、留学して起業したという20代の経験と展望を理解することができ、大きな刺激となったようだ。
遠隔講義については、別途を参照されたい。

24日:FX Palでは、過去10年の最新の研究成果例の紹介を受けた。5年以上前に、キンドルに相当する製品を開発していたことや、日本のインターン生のアイデアを採用する試み等、大企業の研究開発もシリコンバレーではイノベーションに大きな貢献があることを確認できた。
使用教材等 「Focus: Looking to High-Tech Startups to Drive Open Innovation」NORIKO TAJI
米国人および日本人間で、日米の起業環境の比較のために事前に配布した。
教材・配布資料、その他 japanese-challenge-for-open-innovation.pdf
米国視察レポート.pdf
シリコンバレー見学ツアーを終えて.pdf
009_01009_02009_03

今後の講座実施に向けた示唆

今年度の成果・反省点 教科書に基づいて、各国の起業環境および事例を説明することができたので、学部生にも情報提供はできたと考える。各章を担当した執筆者5名が輪番で講義したことは変化に富み、大学院生には好評であった。
日本の起業家をゲストに迎えた回、日米で起業支援を行う弁護士およびキャピタリストを迎えた回は、質問や議論が進んだ。最後のゲスト2名を迎えた回は、パネルの時間が足らなくなった。延長して実施できるとよかったかもしれないが、日本は昼食時間にかかり、米国は21時になったので、限度であったと考える。
大学院生のレポートの中には、学部生にとって参考になるようなレベルの高いものが見られた。最後ではなく、途中に提出を求めていたら、学部生に配布することができただろう。
来年度に向けての展望等 最新の起業環境講義を提供するという意味では、来年度も同じ教科書で、同じ外部講師を依頼することは避けたい。遠隔を使った講義は好評であったため、来年度の大学院(ビジネススクール)の異なる名前の講義「ワークショップ」で、発展的に続けていきたい。 米国で研鑽の日本人起業家をゲストに招く遠隔講義を、今年と同じく土曜の午前中に実施したい。米国では金曜の夕方に相当するため、比較的ゲストをよびやすい。
また、米国に学部生を引率するプログラムは、来年も実行したいが、できれば、夏休みを使ったインターンシップについても検討したい。インターンシップに1ケ月参加した学生に、視察だけする大勢の学生を案内して説明も行う役割を担わせたいと考えている。