トップ > 起業家教育モデル講座事業 > 平成22年度 モデル講座実施報告 > 北海商科大学 『アントレプレナーシップ論』

北海商科大学 『アントレプレナーシップ論』

学部・学科/研究科名 北海商科大学 商学学部 商学科・観光産業学科
講座名 アントレプレナーシップ論
対象者 3年生
担当教員 堤 悦子

講座の目的

北海道はきわめて行政依存の高い地域である。アントレプレナーと接する機会が少なく起業になじみがない。そこで企業家を身近に感じてもらい、起業という選択肢が人生の中にあるということを大学時代に学ぶことを目的にする。そのためにすでに北海道で活躍している企業の社長を招聘し、学生は予め調べた企業について仮説を立てたうえで講座に臨み、質疑応答を通じて実証を行う。また、学生がシーズを生かしてビジネスプランをたて、資金調達のためにプレゼンテーションができるまでのプロセスをサポートすることを狙う。そこで実業界で活躍している藤巻幸夫氏を招聘し、講演してもらうほか、それまでの講義で学生が企業の社長に刺激されて作成したビジネスプランのプレゼンテーションに対してコメントやアドバイスをもらう。こうした実学に近い講義を通して起業家精神の涵養と起業への意欲を促すことを目的にする。

講座スケジュール

日程 日付 講座内容
平成22年9月 28 アントレプレナーシーシップとは何か
平成22年10月 5 株式会社アンビックスのケース
12 『わが社の生き残り戦略―起業から今日』 アンビックス 前川 二郎
19 『北海道における革新的観光産業とベンチャー』
26 『収益構造ではなく収穫構造へ』 クリプトンフューチャーメディア社
平成22年11月 2 『こころざしを持て、自分に惚れ、仕事に惚れよ。』 加森観光社長 加森 公人
9 アントレプレナーシップと政策
16 日本の中小企業支援政策史
30 北海道のクラスター政策・バイオテクノロジー
平成22年12月 7 アントレプレナーシップ ~我が社の経営について
14 ソーシャルアントレプレナー
平成23年1月 11 夢の実現、社会事業とビジネス
18 (1)皆で協力してつくりあげるビジネスプラン/(2)石崎岳(前総務副大臣)特別授業
25 (1)ビジネスプランとプレゼンテーション
平成23年2月 1 『投資家の目からみたビジネスプラン』 藤巻ジャパン 藤巻 幸夫

実施報告

第1回 アントレプレナーシップ論

講義開催日 平成22年9月28日
開催場所 北海商科大学405教室
担当教員 堤 悦子
講義の内容 初回であるため、どれだけの学生が関心を寄せて履修届を出したか自己紹介させた。次にアントレプレナーシップとは何か、単なる精神論ではないこと、起業家機能を学ぶことの意義を語った。また、数日前に行われたバイグレイブ教授の授業について、概略を説明し、小さな事業のスタートアップが経済に及ぼす影響について、私なりに説明した。さらに、スタンフォードの例を取り上げ、大学発ベンチャーについても説明し、さらに日本におけるベンチャー企業政策史について説明した。その上で、この講義が起業家教育の育成のために、経済産業省から支援を得ていることなどについて説明した。最後にスケジュールを再確認し、来週取り上げる株式会社アンビックスについて、おおよその事業内容を説明し、宿題を科した。
担当教員所感 残念ながら、履修者はほとんどシラバスを読まずに授業を自身の時間の都合で選択していた。しかしながら履修した以上、単位取得にむけて積極的に取り組む姿勢がみとめられた。今年の履修者は「アントレプレナーシップ」という言葉も正確に読めない学生もいるので少し気落ちしたが、次回から招聘企業に関するケースを取り上げるために、教師がリーダーシップをとって、学生に株式会社アンビックスについて魅力をアピールした。本学では観光産業学科もあるため、学生にとって身近にある企業だということを知らせたところ興味を持ったようである。バブソンが学部生中心に講義をしていることを思い出して、それを励みに次回も頑張ろうと思った。
使用教材等 「Entrepreneurship」バイグレイブ著 原書と翻訳版
「New Venture Creation」ティモンズ著 原書と翻訳版
「Entrepreneurship」(ケース:アリソン・バーナード)
株式会社アンビックスのケース
教材・配布資料、その他 hokkai01_photo

第2回 アントレプレナーシップ論

講義開催日 平成22年10月5日
開催場所 北海商科大学405教室
担当教員 堤 悦子
講義の内容 初回にケースについて調べてくる宿題を出した。今回はこれを発表してもらった。大半の学生が、インターネット上からの文献検索にとどまったために同じような内容になったが一人ずつプレゼンを行わせた。さらに、同社の戦略などについて議論を行わせた。学生はほとんど、同社の施設を利用したことがない。そこで同社の顧客ターゲットについて推測をし、質問の仕方について、教えた。すなわち、ただ興味本位でする質問ではなく、ケースとして調べたがわからなかったという経緯を、なぜそうした質問が発生したのか、自身の研究あるいは実際上の必要性を披歴した上で質問をするという手法を教授した。
担当教員所感 この段階で履修登録者の半分が欠席した。(おそらく宿題をしてこなかったためだと思われる。)バイグレイブ教授は学部の学生に対して、起業の講義をされているわけだが、本学においてはそれ以前の課題が多い。特に私の授業は、眠っていられない。回ってあててゆくので、学生は慣れていない。もともと午前の授業は履修者自身が少ないなど、本学の問題点が浮き彫りになっている。もっとも10人の学生は、きちんと宿題をこなし、それなりに質問事項も考えてきたので、これらを大切に育てなければいけないと感じた。
使用教材等 株式会社アンビックスのケース

第3回 『わが社の生き残り戦略 - 起業から今日』ケース (株)アンビックス

講義開催日 2010年10月12日 10:10-12:00
開催場所 北海商科大学405教室
担当教員 株式会社アンビックス代表取締役社長 前川二郎様 + 堤悦子
講義の内容 今回は、株式会社アンビックスの前川二郎社長を招聘して、起業に至る経緯とその後の生き残り戦略について講演を拝聴した。同氏は、北海道出身ながら大学は東京で学び大手ディベロッパーに就職。ところがその大手企業が倒産して、起業を決意した。当時北海道は、ほとんどマンションがなかったが、雪かき不要のマンションがあたると確信し、当初は建築業者にマンション建設の提案をする事業から始めた。さらに、自身が共同事業として参画。ディベロッパー事業とマンションを管理する会社も展開することとなった。そして、マンションに住む人々が週末のひと時をゆったりと過ごすための、アーバンリゾートを提案するために、朝里クラッセホテルを始めた。現在は経営が立ち行かなくなった地方自治体のリゾート施設などの再生事業の依頼を受けて、様々な事業を運営するに至っている。
担当教員所感 聴講している学生には、あらかじめ同社について調べるように宿題を科し、発表させて質問までまとめさせたが、本学の学生の手はほとんどあがらなかった。これには反省材料となった。実は、学生があまりにも安易な質問しか考えつかないので、同社について十分調べた上で、「それでもわからなかった。」ことについて質問するように促した。また、どうしてそうした質問がしたいのか、根拠を述べてから質問するように促した。その結果学生は委縮してしまったようである。逆に北海学園大学の学生は、御社の客単価はなどという安易な質問をして社長が「何故それがききたいのか。」聴くような場面もあった。(学生は答えられなかった。)指導上の課題となった。
使用教材等 アンビックス前川社長作成のレジュメ「我社の生き残り戦略(起業から今日)」、
アンビックス社の事業案内、上映用DVD(経済ナビ)
教材・配布資料、その他 hokkai_002hokkai_003

第4回 『北海道における革新的観光産業とベンチャー』

講義開催日 2010年10月19日
開催場所 北海商科大学405教室
担当教員 堤悦子
講義の内容 今回は、前回までの復習と次週の準備とした。まずアントレプレナーシップとは何かということについて、すでに教えてきたものを再度プロジェクターにて映し出しながら、聞いて回った。再度、スタートアップのダイナミズムと資金調達からイクジットまで、さらにそれを循環させるシリアルアントレプレナーの存在について、説明した。また、シュムペーターの着目した企業家の機能、日本におけるベンチャービジネスという用語についての政策史的経緯を、テキストを用いて講義した。さらに来週にむけて、すでにクリプトンフューチャーメディアという会社を調べた学生に発表してもらった。クリプトンが「音」の会社であること、海外にグローバルに展開していることなどが来週受講予定社の共通認識となった。また、アンビックスと加森観光を比較対照とするにあたり(次回の宿題とする予定)、創業者により企業と、第二創業について説明し、学生に加森観光を調べる際のヒントを提示した。に質問の仕方について、前回の反省を踏まえて、具体例をあげながら指導をした。
担当教員所感 起業家に対する質問の難しさについて、学生から前回の件について再度質問があった。学生は「御社の中国戦略は?」という質問をしたようだが、まともに答えてくれなかったととらえているようだ。私は、何故そういった質問が出てくるのか、述べながらきちんと調べた上で聞けばよかった、学生は中国語選択だったので聞きたかったようだが、そうであれば「中国語を選択し、これからの中国は云々と将来性を指摘したうえで、御社のことを調べたが、不明だったので」と聞くべきとアドバイスしたが、なかなか質問の仕方は難しいことは確かであると思った。
使用教材等 日本中小企業政策史(清成忠男、有斐閣、2009年)
アントレプレナーシップ論は講師がパワーポイントにて作成
学内の設備で映写
教材・配布資料、その他 hokkai_004_1hokkai_004_2

第5回 『収益構造ではなく収穫構造へ』

講義開催日 2010年10月26日 10:10-12:00
開催場所 北海商科大学405教室
担当教員 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社社長 伊藤博之氏
講義の内容 今回は、クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之氏に講義をお願いした。同社は、音を扱う企業であり、楽器の音を合成して曲にするソフトを作り、音も売っている。2001年からは、携帯電話の着信曲も扱っている。コンテンツと技術開発の両方を担当し、その接点部分を請け負うことが得意である。起業した伊藤氏は、もともと北海道大学の職員として工学部に配属され、研究開発部門の補助をしていた。パソコンで音をつくることに興味を持ち、自身も機材を購入して音を手がけ、趣味の雑誌に音の販売を公告したところ、アメリカのクライアントがついた。アニメのキャラクターに作成した曲を歌わせることを発想し、初音ミクでブレイクした。初音ミクはネット上でしか見ることができない。ブログ最盛期の時代にブログで広げていった。また初音ミク自身は、誰にでもそのキャラクターを無料で貸し出し、様々な使い方を許したため、それがブレイクの原因ともいえる。商品は、まず売れているようにみえること、顧客も巻き込むということが必要という新しいマーケティングの発想も披歴していただいた。
担当教員所感 伊藤氏の事業内容は若者にとって興味のあるものだったためか、今回はほぼ満席だった。そして、たとえば、「できないこと」はがんばらない「できること」に発想を切り替える、というものである。さらに経営形態の構造は収益構造ではなく、収穫構造という発想が必要であるといった点は、きわめて示唆に富むものであった。もっとも同氏は趣味を仕事にしてしまったため、趣味を仕事にするのはつらくないですかという質問に対して辛いという返答があった。企業家の涵養という講座の趣旨からは戸惑ったが、それが起業をするということの実態でもあるといことが学生に理解できれば、よかったのではないだろうか。新しいタイプの企業家である。
使用教材等 クリプトン・フューチャー・メディアのケース
伊藤氏持参の媒体をパワーポントによって発表、事業案内配布
教材・配布資料、その他 005_01005_02

第6回 『こころざしを持て、自分に惚れ、仕事に惚れよ。』

講義開催日 2010年11月2日10:10-12:00
開催場所 北海商科大学405教室
担当教員 加森観光株式会社 代表取締役 加森公人氏
講義の内容 加森観光の原点は、登別のクマ牧場から。何でもNo.1になれば覚えてもらいやすい。最初の成功は、熊の人工飼育。さらに熊に芸を覚えてもらう。こうして、オンリーワン企業として名声を高めていった。事業は、中古の設備を購入し自社のリゾート施設で使いまわす。現金商売を旨とし、手形は扱わない。もっとも自社の危急に際し、現金化可能な、駅至近のビルを担保として購入するが、事業はリゾート開発(倒産した事業の購入)を旨としている。登別で得た収益は、大和ルスツに投資した。北海道では、夏の時期しか稼動できないという固定観念があるが、ルスツはスキー場もひかえ、夏と冬の両方で収益を生む。地方の雇用創出にも貢献し、事業再生ビジネスの成功を買われて、地方自治体から再建依頼がくるようになった。
担当教員所感 加森氏の発想は、きわめてユニークである。さらに投下資本に対しての利回りを考えて、中古物件や、倒産リゾートを購入するという。しかし、そうした臭覚や嗅覚自体が、アントレプレナーにあって特徴的な資質である。私は、同氏が二代目であるという点に着目していたが、当たっていないようである。その原点を探った質問をしたところ、同期に著名な政治家などもいることも動機づけられているようだ。そうなると「アントレプレナーは辺境から生まれる」という一橋時代に恩師がいっていた仮説も崩れる。ここにアントレプレナーシップの涵養の難しさということも感じられる。
使用教材等 加森観光のケース
参照配布物、『ホッカイドリームソーダ』p.250-279
加森氏より「加森観光グループの歩み」314ページの冊子
加森氏より‘RESORT NETWORK’加森リゾートのネットワーク紹介
教材・配布資料、その他 006_01006_02

第7回 アントレプレナーシップと政策

講義開催日 2010年11月9日10:10-12:00
開催場所 北海商科大学
担当教員 堤悦子
講義の内容 今回は、招聘した社長の企業について復習を行った。まず、アンビックスの社長は、東京に出て就職後にオイルショックの影響で、期せずして起業するはめになった。経緯はともかく、社会の経済状況をみきわめて事業を発展させていく様について、もう一度復習した。フューチャー・クリプトンメディアの社長も、地元に根差してグローバルな展開を見せる大胆さを秘めていることについて言及。加森観光についても然りであり、時機をみて世界をまたにかけて、事業展開している点を復習した。日本の企業家は、Exitという風土がないため、事業を継続してゆくことが通常だと捉えられている。そうなると一見多角化しているようにみえる、といった態様について、アメリカにおけるスタートアップか⇒成長⇒売却という場合との違いについて解説した。
担当教員所感 学生には感想文を書かせたが、加森観光について感動はしたものの、アントレプレナーになることは、未だ選択肢になっていない。不思議なことに特に今年の学生は、キャンパスベンチャーグランプリに応募する数も少ない状況にある。大学教育は、懇切丁寧に水飲み場まで学生を連れて行って、水を飲ませよという方向にあり、自立心はなかなか養えない。これは少子化の現状に対応していると考えられる。しかし、これでは国の競争優位がおぼつかないのではないかということが懸念される。もっとも伊藤氏の講演時には、満杯になるほどの若者が集まった。若者も全くやる気がないわけではなく、興味があることには熱心である。従って、新しいかたちのアントレプレナーを想定して、気長に学生に潜在するであろうアントレプレヌリアルなマインドを少しでも刺激することを目指していきたい。
使用教材等 『日本中小企業政策史』清成忠男著(有斐閣)
「加森観光」のケース『ホッカイドリームソーダ』(北海道新聞社)
「加森グループのあゆみ」(加森観光株式会社)加森社長より提供

第8回 日本の中小企業政策史

講義開催日 2010年11月16日 10:10-12:00
開催場所 北海商科大学 405番
担当教員 堤悦子
講義の内容 まず12月7日に招聘するアミノアップ化学についての教材を配布し、アミノアップ化学が現在の北海道のクラスター政策において、いかなる位置づけにあるのかを概説した。そして、配布した資料を参照しつつ11月30日まで(次回の直前)に、アミノアップ化学についてレポートを書くことを宿題とした。次に、日本の中小企業政策の第一人者である清成忠男の著書について、特に戦後日本の中小企業政策と評価という観点から講義を行った。GHQの占領政策とドッジライン、傾斜生産方式、集中生産方式、さらに二重構造について、著者である清成忠男のきわめて鋭い観点からの再考察の解説に力点をおいた講義を行った。日本のベンチャー政策の箇所まで到達することを目指したが、教材に掲載されていた条文(中小企業庁設置法)や当時の経済状況を理解するために掲載されている豊富なデータを読み解いてゆき、目指した個所にまでは到達しなかった。最後に二重構造について、有澤、清成、白書の見方についてまとめるという論文式のテスト(時間内に提出)を行った。
担当教員所感 最近の学生はなかなか文章を読まない。そこで知識の定着をはかるために、時々テキストの該当箇所のまとめを、テストとして遂行している。テストという緊張感があると多少、中だるみ気味になってきた授業が引き締まる。このシーズン、学生は企業説明会に気を取られがちである。ほどよい刺激になっていると思われる。
使用教材等 『日本中小企業政策史』(清成忠男著、有斐閣、2009年)
『北海道の企業1』(小川正博、森永文彦、佐藤郁夫著、北海道大学出版会、2005年)
第8章「アミノアップ化学」p.205-223(玉井)
教材・配布資料、その他 008_01

第9回 北海道のクラスター政策・バイオテクノロジー

講義開催日 2010年11月30日 10:10-12:00
開催場所 北海商科大学 405番
担当教員 堤悦子
講義の内容 二重構造論について、有澤、清成、経済白書の立場などを復習し、日本の産業政策について解説を行った。さらに日本のクラスター政策の歴史的背景、予算規模、日・米・独のクラスターの生成過程と政策の違いについて講義した。質問者とのやり取りで、バイオベンチャーの生成について説明した。コーエン・ボイヤー特許は何度か解説したことがあるが、特許コーディネーターが知財を発展させたという観点から言及することとなった。さらにアミノアップについて検討した。同社は、北海道が認定する二つのスーパークラスターのうちのバイオ企業の代表格である。小砂青年のチャレンジ精神からはじまり、ドメインを変遷させながら着実に成長を遂げてきた。そのマネジメントと社会的起業家性について言及した。(同社については、すでに上記の資料を配布し、企業について調べて提出させている。難しいと悲鳴をあげる学生もいたので丁寧に解説した。)
担当教員所感 数日前を期限にして、アミノアップ化学に関するレポートを提出させた。インターネットにおける会社概要の参照以外は、配布した資料が学生にとっての唯一の資料だった模様。機能性食品を扱う同社は、学生にとってなじみはないようだ。しかし講義をするうちに徐々に理解を深め、興味を持ったように感じられた。最終的には、かなりポイントをついた質問ができるようになった。従って来週は、学生が良い講義になるような質問をすると期待される。バイオ企業に潜在する問題点(なじみが浅いゆえに一般の支持が得られない)を研究者として再認識したことは自身の研究の副産物ともなった。
使用教材等 『北海道企業ファイル』(北海道新聞)p.224
『北海道の企業1』(小川正博、森永文彦、佐藤郁夫著、北海道大学出版会、2005年)第8章「アミノアップ化学」p.205-223(玉井)

第10回 アントレプレナーシップ ~我が社の経営について

講義開催日 2010年12月7日 10:10-12:00
開催場所 北海商科大学 405番
担当教員 株式会社アミノアップ化学 会長 小砂憲一氏
講義の内容 小砂会長は、自身が開発した農業飼料が草木を活性化させる作用があるということに気がつき、起業。当初主力商品のAHCCは売れず、大変な時期もあった。紫蘇エキスがブームに乗って爆発的に売れてから、AHCCも抗ガン効果があることが話題になって会社は急成長した。しかしいつも自身を戒め、身の丈にあった経営をしている。同社の強みは知財(製造/用途/物質)さらに周辺特許、製法特許で固め、常に海外を視野に入れて事業を展開している。例えば肝臓癌はタイが多い。タイ独自の治験と大学で研究を進め、マーケット拡大をねらう。中国では喉頭癌、と国際市場を鳥瞰し共同研究を厭わない。社員にも国際感覚を身につけてもらう為、社内研究、海外研修に力を入れている。そして社会にとって必要な企業で有り続けるために、社会奉仕することを義務づけている(実際社員が社会奉仕を通して学んでくることも多い)。北海道は可能性を秘めているのであり学生は、牽引役になれ!
担当教員所感 北海道ではバイオおよびITをスーパークラスターとして推進。
現在は、食クラスターとしてAll北海道体制。小砂氏はそのトップである。バイオ企業でありながら、きわめてわかりやすい講義をしていただいた。さらに様々な大学で講演をしているが、学生の真摯さに感心したとお褒めの言葉をいただいた。救われた気がした。身の丈にあった会社ということばには目から鱗。
使用教材等 「会社概要」アミノアップ化学
ビデオ(各界インタビュー等記事編集)アミノアップ作成

第11回 ソーシャルアントレプレナー

講義開催日 2010年12月14日10:10-12:00
開催場所 北海商科大学405教室
担当教員 堤悦子
講義の内容 前回のアミノアップ化学について、まず学生らに印象をきいた。そして、日本のバイオ企業、北海道のアグロバイオなどの状況について、再度理解度を確認し講義を行った。またアミノアップ化学のビジネスモデルなどについても復習した。アミノアップ化学の会長の講演で学生の印象に残った事項として、「従業員に社会奉仕を課し、事後レポートによっては、賞与の査定にプラスαがある。」ということだった。小砂会長は社会に貢献する企業ということを深く考え、信念をもって企業運営をしている。そこで今回は、アントレプレナーシップ論で必ず触れる社会的企業家について講義を行った。DVD鑑賞前に、ビルドレイトンおよび、その支援を受けた社会的起業家について言及した後、福祉事業ではない、社会的企業という概念について、ムハメッドユヌス氏のケースを扱い概説した。DVDでは、ユヌス自身がその生い立ちおよび社会的背景を解説し、グラミン銀行を設立した経緯について触れていた。
担当教員所感 アミノアップ化学は、学生にとって馴染みがなかったが実際の起業家と意見交換ができる場を設けることができたことは、少なくともマイナスではなかったようだ。小砂会長には、会う前から厳しい感じがしたけれど、にこにこしていたと、きわめて評判が良く(加森社長の時も同様)学生はかなり親しみを感じたようだ。その一方で、信念のあるマネジメントに敬服したという。一方信念という意味では、ユヌス氏も同様に信念を貫いたといえる。そこで今回のDVD鑑賞とアミノアップ化学を連動させるようなレポートを書くための計画書を提出させたところ、信念を貫くという観点から考察したいという案もあり、学生の成長ぶりに驚いた。もっとも学生の中には、社会的背景が全く異なるバングラデシュという国についてイメージがわかない者もいた。(あらかじめ、Social Entrepreneurを扱うこと、ユヌス氏のDVDの鑑賞は、告知していたが、調べきれなかったようだ。)またグラミン銀行の起業について、何度も銀行にかけあったが貧困女性には融資さえなされないという点について、学生は理解しにくいのではないかという懸念があった。しかし施しではなくビジネス、またアントレプレナーという点については、理解が得られたようである。冬休みの宿題に課したレポートがどのようになるか楽しみだ。
使用教材等 アショカDVD 社会起業家シリーズ ~未来を変える人たち~
2008年、紀伊国屋書店 第1巻ムハメドユヌス
教材・配布資料、その他 11

第12回 夢の実現、社会事業とビジネス

講義開催日 2011年1月11日10:10-12:00
開催場所 北海商科大学
担当教員 堤悦子
講義の内容 学生には、社会的企業という見地からグラミン銀行とアミノアップ化学、またはそのいずれかについて、冬休みの間に調べるように宿題を課したところ、年末に受講したほぼ全員がレポートを提出した。さらにそれを土台に、社会企業という概念について、復習した。中には、あまり知られていないことまでも調べた学生もいて、進歩が認められた。さて、年末に私は、札幌市経済局から照会を受けた。新卒採用が厳しい中、起業も就業の選択肢と考えられないかということだった。北海道の大学に就任する以前の私であれば肯定的な返答をしたかもしれないが、北海道は極めて公務員志向が強い。従って自ずと慎重な答え方になった。しかし翻って、本講座では学生の起業マインドの涵養であったことを再認識した。1月は、当初からビジネスプランを書かせる計画であったため、ゆるやかな導入を試みた。すなわち起業教育ひろばに掲載されていた、「i believe」プランを参考に、自身にお金があったらどのような社会貢献が可能かを考え検討させてみた。20名の受講者のうち、「起業」に対して明らかに拒否反応がみとめられる学生は1名。残りは、自由な発想で、夢を語った。中には、すぐにでも採用したいような構想をする学生もいた。そこでそれを藤巻氏の前でプレゼンできるように、夢のタイトル、概要(400字)内容(3000字)、資金を書いてくるように、宿題を課した。
担当教員所感 北海道においては、よく知られている企業の起業家を招聘し、各起業家は口々に北海道の可能性と学生のマインドを刺激してもらったが、学生はあまり刺激されていないのではなかと感じられる日々だった。しかし事業計画にもあるように、ビジネスプランのプレゼンをVC(当初計画)ならぬコンサルタントの藤巻幸夫氏を前にして発表し、コメントをもらうことにしているため、緩やかな導きを試みた。教育は日々挑戦でもある。社会的意義の点を強調し、実現可能性も別にすれば、学生はかなり魅力的なビジネスプランを構想するものだということも発見した。なお昨年のゼミ生が卒業アルバムの為に参集したため藤巻幸夫氏を招聘することを告げたところ、後輩(アントレプレナーシップ履修中のゼミ生)に藤巻さんにいいコメントをもらえば、絶対に就活に使えると言われ、急に頑張る姿勢を見せ始めた。他の受講者もこうあってほしい。
使用教材等 アショカDVD 社会起業家シリーズ、第2巻グラミン銀行、2008年、紀伊国屋書店 
起業教育ひろば
教材・配布資料、その他 012012_2

第13回 (1)皆で協力してつくりあげるビジネスプラン/(2)石崎岳(前総務副大臣)特別授業

講義開催日 2011年1月18日 (1)10:10-11:00/(2)11:10-12:00
開催場所 北海商科大学
担当教員 堤悦子
講義の内容 1講目は、前回の宿題を各自が発表した。最初の発表者は、ビジネスプランにも応募した学生だったこともあり、かなりしっかりしたプランで、充実した討論が戦わされた。次以降の発表者も、プランはまだ練られていないとはいえ、かなり積極な姿勢で、授業に臨み、プレゼンを行なっていた。聴衆(学生)に「プランの続きを一緒に考えましょう」と呼びかけたところ、かなり色々な提案が出て最後にはよいものに発展した。50分で全員が発表しきれなかったので、次回に持ち越しとなった。2講目の50分は、石崎氏の授業となった。石崎氏は、映画ソーシャルネットワーク、大学発ベンチャーの話から、拓銀の破綻が北海道経済に及ぼした影響、それによって起業意識が薄れている点などについて、自身の見解を、学部生にわかりやすく解説した。北海道独自の問題点について、かなり詳細な分析を披瀝していただいた。また総務副大臣として要職にある時に、北海道に大きな経済危機が起こったため、そうした経験談を踏まえたきわめて正確かつ詳細な講義だった。
担当教員所感 藤巻氏の来道を予定している最後の授業では、ビジネスプランを発表してもらう予定である。今回の発表を聞いた限りでは、藤巻氏のよい反応が期待できると思う。さて、札幌市経済局も、就職の一つのオプションとしての起業を検討するということであるし、(最終回聴講希望のメールも再度あり、快諾)まさに本学のような学生達にとっては、起業することも就職の選択肢に入れざるをえないのではなかろうか。大学が就職について支援するのであれば、創業に関して、中小企業診断士の徹底的なハンズオンとか、大学独自でVC招聘の上、ビジネスコンテストを催すなど、何らかの仕掛けが必要だと思った。
 石崎岳氏の講演は、同氏の実体験に裏打ちされたものであり、きわめてためになった。また北海道独自の問題というのも強く認識させられ、今後の教育および研究に非常に有用だと感じた。招聘にあたり、学生達のアントレプレナーマインドを刺激してほしいというリクエストに応じていただいており、対象をあくまでも学生と想定して、わりやすい講義をしていただいた。ところが、質問は皆無であり、がっかりした。なお、北海道大学の工学部生発ベンチャーの草分けBUGが、時代の波には乗りきれず、結局現在は全く違う態様の会社になっているということは、特筆すべき事項だと思えた。
使用教材等 石崎岳北海学園特任教授、作成資料
教材・配布資料、その他 13_0113_0213_03

第14回 (1)ビジネスプランとプレゼンテーション

講義開催日 2011年1月25日 (1)10:10-11:00 (2)11:10-12:00
開催場所 北海商科大学
担当教員 堤悦子
講義の内容 まず上記テキストからのエピソードを導入として引用した。そして今までの総括と来週のビジネスプランの発表の確認を行った。この講座の受講生に対しては、プレゼンテーションの指導をする時間的な余裕がなく、ようやく前回から発表させ出遅れた形となった。プレゼンテーションという観点からいえば、準備不足は否めない。しかし次回が藤巻氏による講義であり、今回は私が行う最初で最後のパフォーマンスの指導となった。なおインフルエンザの影響で、前回よりも出席者が少なかった。もっとも現在の4年生で起業家を志すことになった、S君(もと堤ゼミで、キャンパス・ベンチャー・グランプリ受賞を目標にがんばって入賞)が、特別参加を希望して、自身のプラン発表の為に、教壇に立ち、先輩として、受講者に対してプレゼンテーションのモデルとして、自身のかつてのプランを発表し、さらにプレゼンの例を示した。
担当教員所感 来週はいよいよ藤巻氏の来道である。特別参加を希望してきたS君は、藤巻氏にコメントをもらいたい一心で参加するに至っているが、それ以外の学生はなるべくなら受け身で授業に臨みたいようだ。さらにプレゼン発表を科した後、受講者が減ったことは懸念材料である。もっとも、シーズの中には光るものを発表した学生もいたため、量より質、これを引き出す指導が不可欠だと感じた。教育という観点からすれば、最後までじっくりS君と他の受講者のどこが違うのか見極めたい。(S君はアントレプレナーシップ論を昨年受講)私の方で提供したほぼ全てのプログラム(北海道大学とのコラボレーションによる実践的マーケティング講座参加、キャンパス・ベンチャー・グランプリ応募等)に、積極的に参加してきた。
使用教材等 『20歳のときに知っておきたかったこと』ティナ・シーリグング著、阪急コミュニケーションズ2010年
教材・配布資料、その他 014_011014_021014_03
014_04014_05014_06

第15回 (1)藤巻幸夫講演 &プレゼンテーション発表会

講義開催日 2011年2月1日10:10-12:20
開催場所 札幌全日空ホテル
担当教員 藤巻幸夫/堤悦子
講義の内容 今回は、藤巻氏に講演を依頼し、札幌市の起業家教育担当者等5名をはじめ、オープン講座ということにしたため、加森観光の加森公人社長が一般席に座られて、聴講された。
上記テキストはあらかじめ読んでおくように配布した。まず藤巻氏が50分講演を行った。内容は、同氏が何故今のような世界で活躍しているのかといったことを中心にエピソードを交え、世の中には、売れる物と売れない物があること、売れるためには、モノ/柄/デザイン/用途/サイズ/価格といった視点がある等の解説が熱くかたられた。またビジュアルなマーチャンダイジングの重要性など、なかなか研究者では講義できないほどの熱い語り口と、パフォーマンスで、実践に裏付けられた講演をしていただいた。後半は、学生が作成したビジネスプランについて、各自発表を行い、藤巻氏にコメントをいただいた。藤巻氏は実業家であるため、中には、類似のビジネスはあるのではないかといった指摘や、また第一線で活躍する友人の名前を挙げつつ、検索のヒントとなるような言葉や要人の名前などを教えてもらえた。最後の総評では、21,2歳でこれだけのプランをたてることができることは素晴らしいと、ほめていただいた。
担当教員所感 藤巻氏との間には、当日までコミュニケーションがとれない状況で、相当大変だったため、無事に済んだことにまず安堵している。学生は、藤巻氏が急遽当日来道となり(予定では前泊)、天候も厳しいことが予想されていたため、とりあえず全員に発表の機会があるという前提で、準備をさせ、それなりの指導を行ってきた。前日になって、藤巻氏の母体であるフジマキジャパンから急に(すでにこちらから送付していたスケジュール表とは異なり、)50分講演されると申し出があったため、私の方で、当日学生に順番を示して席を指定席として、時間切れまでの発表となった。発表した数人以外は、もともと積極的ではなかったので、ほっとしているのではないかと思った。ところが藤巻氏の影響はすごいもので、大学に戻ると、発表できなかったが見てほしいと数人が申し出てきた。なお、加森観光の加森公人社長が、聴衆として参加されたことは実に驚きであった。藤巻氏は加森氏にむけても、情熱的な講義をされたようである。(両者は他のビジネスにおいて知り合い。)すなわちこうしたビジネスプラン発表会を通して、さらに実業界と学生との関係が近くなれば、学生にとって、起業ということが遠い話ではないと思えるのではないか。
使用教材等 『コミュニケーション学』藤巻幸夫著、実業之日本社2010年
教材・配布資料、その他 015_01015_02015_03

今後の講座実施に向けた示唆

今年度の成果・反省点 アントレプレナーシップ論の今年度の講義は、コンサルタントの藤巻幸夫氏を迎えて、聴衆には講師にも招聘した加森観光の加森公人社長がいるという豪華版で、盛況のうちに2月1日に終了した。
最終回は、VCへのプレゼンテーションを予定していたが、藤巻氏が来道を快諾されたため、急遽藤巻氏に対するプレゼンテーションになった。これは、同氏の本を読んだり、マーケティングを学ぶ学生にとっては垂涎の授業だといえるのだ(北海学園大学からの聴講希望者の弁)が、本学では直前まで、なかなか盛り上がる気配を見せなかった。しかし杞憂することなかれ、藤巻氏の熱弁と、加森氏の質問やトークのおかげで、学生は随分刺激されたようである。優れた講師に任せればうまくいく。
最終的には、全員がプレゼンテーションを披露する時間がなかったが、嫌々参加の学生達が、堤だけにでも見てほしいと後からやってきたことは期待以上の成果だった。さらにそうした学生達が、ゼミの教師に報告したため、一部の先生方にも波及効果をもたらしたようである。実学を学ぶ商科系の大学にとってよい刺激になったと思われる。昨年の受講者であり、今年途中から参加してきたS君をはじめ、起業を志す学生が生じたことも成果である。
さらに、今まで、学部の学生の起業は支援していなかった札幌市経済局が、5人もの職員を派遣して聴講に来られた。これも成果といえる。反省点:北海道の活性化のために、北海道における実業家の方々が、手弁当で講義してくださるのだから、効果的な広報を行い、より多くの学生に聴講してもらえばよかったと反省している。なお大学の教員が孤軍奮闘する形で、実業界の著名人を招聘することは限界がある。
来年度に向けての展望等 北海道は経済が低迷し、しかしながらあまり危機感がないという、不思議な地域である。従って、アドバイザリーボードから『北海道の』企業家の招聘ではどうかという助言されたことは、きわめて的確だった。北海道をよく知っている地元の著名な企業家が学生に語りかけてくださったおかげで、講座は大変有意義なものとなった。特に、アミノアップ化学の小砂会長は、北海道では失敗が許される、起業しやすい土地柄であるという地域の優位性を力説されたが、同感である。
札幌市経済局は、寄付講座を本学に設けることを示唆していただいたが、本学側は受け入れ体制をとらない様子が窺える。これだけ盛り上がったのだからと、北海道経済産業局も、この講座を敷衍した社会人を含めた講演会の企画に積極的である。大学自体の体制を突く点から言えば、同じ商科系の著名な大学人の起業講座(恩師米倉誠一郎、関満博)を、北海道で講義していただいて、本州の大学教育を披瀝してもらえれば広がりができるだろう。次回があれば、そうしたい。もともと私は潜在的な企業家の起業の意思決定と属性やリスク認識との関係について、実証的な研究をしている。日本に特有な起業に関するマインドの調査に研究助成して頂ければ幸いです。