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起業家教育の現状 (H21・H22年度版)

文中数字ならびに図表は、特にことわりのない限り、経済産業省委託事業 平成22年度 産業技術人材育成支援事業(起業家人材育成事業)の一環として行われた 平成22年度大学・大学院における起業家教育実態調査(2010/12/01発表)による。

過去に文部科学省が実施した調査実績と比較すると、起業家教育の実施校は、過去10年で約2倍に増加している(図表1、2000年:139校→2010年:261校)。また、起業家教育の講座数は、過去10年で3.5倍超に達している(図表1、2000年:330件→2010年:1,141件)。

 しかしながら、起業家教育の浸透は進んでいるものの、日本で起業家教育を受けている大学生は0.8%(起業家教育1講座あたりの受講生を20人とし、全大学・大学院生を280万人として算定)とまだ比率は低い。また、米国の大学・大学院における起業家教育にもまだ到底及ばない。カウフマン財団 の報告書 によると、起業家教育の講座数は、過去20年で20倍超に達している(1985年:約250件→現在:5,000件以上)。また、学部教育における起業家教育の専攻やコースについても、過去30年で4倍以上に増加している(1975年:104件→2006年:500件以上)。

【図表 1】 国内の大学・大学院での起業家教育の実施状況

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出所:文部科学省「大学における教育内容等の改革状況(平成18年3月)」、経済産業省「大学・大学院における起業家教育に関する検討会報告書(平成21年2月)」「産学連携人材育成事業(起業家人材育成事業)報告書(平成22年3月)」

Ewing Marion Kauffman Foundation:アントレプレナーシップに関する世界最大の財団。資産総額が21億ドルで、年間支出額は9,000万ドルに達する。
“Entrepreneurship in American Higher Education”:「米国の高等教育におけるアントレプレナーシップ」。有力大学の副学長やビジネススクール校長など、8名の教授等による研究会の成果としてカウフマン財団が取りまとめた報告書。

 国内の実施校における内訳をみると、学部においては217 校で実施されており、大学院においては125 校で実施されている。国立は大学院のみと両方ありの割合が高く、私立は学部のみの割合が高い。

【図表2】大学・大学院別の構成(単位:校数、%)

平成21年度 総数 講座の有無
大学のみ 大学院のみ 両方あり 講義 (科目)なし
総数 576
100.0
130
22.6
45
7.8
77
13.4
324
56.3
大学
種別

74
100.0
7
9.4
19
25.7
22
29.7
26
35.1

69
100.0
9
13.0
3
4.4
8
11.6
49
71.0

433
100.0
114
26.3
23
5.3
47
10.9
249
57.5

平成22年度 総数 講座の有無
大学のみ 大学院のみ 両方あり 講義 (科目)なし
総数 588
100.0
136
23.1
44
7.5
81
13.8
327
55.6
大学
種別

76
100.0
9
11.8
20
26.3
19
25.7
28
36.8

68
100.0
8
11.8
3
4.4
10
14.7
47
69.1

444
100.0
119
26.8
21
4.7
52
11.7
252
56.8

 また、地域別に見ると格差が見られ、全国での実施率(44.4%)に及ばないのは近畿・中国・九州地域であることがわかる。

【図表3】地域別の実施率

地域 回答校数 起業家教育実施校数 割合
北海道 26 12 46.2%
東北 36 17 47.2%
関東 225 106 47.1%
中部 72 35 48.6%
近畿 114 46 40.4%
中国 38 13 34.2%
四国 13 7 53.8%
九州 58 22 37.9%
沖縄 6 3 50.0%
全国 588 261 44.4%

(地域分類は各地域経済産業局の管轄による)

 学部における実施校217校のうち25%近く(54校)が4科目以上の講座を行っている。大学院での4科目以上の講座の実施割合はそれを上回り、実施124校のうち、35%近く(44校)を占めている。起業家教育の専攻やコースについても、学部31校、大学院33校に設置されている国立大学回答校の9.2%にコースが設置されている(図表5)。

【図表 4】国内の大学・大学院での起業家教育の科目分布状況

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【図表5】国内の大学・大学院での起業家教育のコース設置状況

平成21年度 学部 有効回答数 コース設置校数 同比率
全国 576 29 5.0%
国立 74 1 1.4%
公立 69 2 2.9%
私立 433 26 6.0%
2009年度の集計基準を変えたため昨年度報告書と一致しない。
平成21年度 大学院 有効回答数 コース設置校数 同比率
全国 576 30 5.2%
国立 74 7 9.5%
公立 69 4 5.8%
私立 433 19 3.3%
2009年度の集計基準を変えたため昨年度報告書と一致しない。

平成22年度 学部 有効回答数 コース設置校数 同比率
全国 588 31 5.3%
国立 76 0 0.0%
公立 68 4 5.9%
私立 444 27 6.1%

平成22年度 大学院 有効回答数 コース設置校数 同比率
全国 588 33 5.6%
国立 76 7 9.2%
公立 68 3 4.4%
私立 444 23 5.2%

国立大学と私立大学を比較すると、学部の方で平均実施科目数に開きがみられ、私立大学で積極的に起業家教育が実施されている傾向がみられる(図表6左:国立大学1.7科目、私立大学3.2科目)。大学院ではその差は縮まっている(図表6右:国立大学3.9科目、私立大学4.4科目)

【図表6】国内の大学・大学院での起業家教育の実施状況

学部科目 有効回答数 科目設置校 科目数 一校平均
全体 588
217 635 2.9
大学
種別

76 29 48 1.7

68 18 46 2.6

444 170 541 3.2

大学院科目 有効回答数 科目設置校 科目数 一校平均
全体 588 124 528 4.3
大学
種別

76 41 159 3.9

68 12 59 4.9

444 71 310 4.4

 学部、大学院ともに、受講対象を1つの学部(研究科)に絞らず、広く募る講座が多い。実施されている講座のうち、学部では5割強、大学院では4割が全学部(研究科)または複数学部(研究科)を対象としている(図表7)。特に学部の場合は、初学年で実施される一般教養課目の中に取り入れられることもあり、早期の段階からアントレプレナーシップ(起業家精神)を養ううえで重要な役割を果たしているといえる。

【図表 7】複数学部(研究科)での受講可否

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座学以外の特徴的な授業として外部講師の招聘がある。学部、大学院ともに3割弱の講座で取り入れられており(図表8)、授業カリキュラムの中で、起業経験や事業経営などについて関係者から直接話を聞く機会が設けられている。

【図表 8】授業形式の比較

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 また、「学生がプレゼンテーション(課題発表)を行う」、「学生がグループ演習を行う」授業を「学生実践型授業」と定義し、集計したところ、学部での学生実践型授業は163科目(全体の25.7%)、大学院での学生実践型授業は189科目(全体の35.8%)となった。

【図表 9】授業内容の集計(学部)

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 授業内容に関しては、理論を講じる通常の授業に次いでケーススタディが広く普及し、学部ではおおよそ半数の授業で導入されている。また学部レベルでもビジネスプランを作成させる授業が3割近くある。

【図表 10】授業内容の集計(大学院)

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 学部と比較すると、大学院は複数回答が少なく、各科目の専門性が高いことが伺える。

 また、今回起業家教育推進ネットワークでは起業家教育のタイプを分類し、アンケートでも各回答者にそのタイプ別に科目を分類してもらった。

【図表 11】起業家教育科目のタイプ別構成

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a. 起業家専門教育型
経営学部やビジネススクール等において、実際に 起業・創業を志向する学生向けの専門的なもの。
b. 経営スキル 総合演習型 主として経営学部やビジネススクールの仕上げの 演習としてビジネスプランの策定等を行うもの。
c. 起業スキル副専攻型 工学・医学等が主専攻の学生が、副専攻として起業・創業スキルを身につけるもの。
d. アントレプレナー シップ涵養型 主に全学を対象にした一般教養的な起業家教育
e. その他 起業家教育を主目的として実施される講座で、a~d に当てはまらないもの。

 その結果、アントレプレナーシップ涵養型が34%と、全体の3分の1を占めたが、起業家専門教育型も30%と実際の起業家育成を目的とした講座も多いことが判明した。学部と大学院とで分けると、アントレプレナーシップ涵養型は学部43%に対して大学院が22%と学部の割合が多く、起業家専門教育型は学部24%に対して大学院37%と大学院の割合が多くなり、直感的な判断を裏付けた。

【図表 12】起業家教育科目のタイプ別構成(学部・大学院別)

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 起業家教育を支える人に焦点をあてると、科目担当教員は261校で786名、一人当たり単純に1.5科目担当している計算になる。

【図表 13】科目担当教員数(ネット) N=768名

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【図表 14】科目担当教員数(ネット) N=687名

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 招聘される外部講師については、起業家・創業者が全体の26%を占め最も多いが、その他の経営者やコンサルタント・専門家、投資・金融業者、非営利団体関係者なども一定の割合を占めている(図表14)。授業の内容や目的がそれぞれ異なり、多岐にわたっていることが反映されている。

 科目担当教員と招聘される外部講師数を合わせると、日本では1473名が起業家教育に従事していることになる。
 
 授業(科目)以外にも、回答校のうち、約2割(108校)で起業家教育に関する独自のイベントやプログラムが展開されている(図表15)。関連セミナー・シンポジウムの開催、学生向けビジネスプラン・コンテストの開催のほか、起業家教育と関連したインターンシップ制度の設置、学内インキュベーション施設との連携等が含まれる。特に、学部と大学院の両方に起業家教育に関する科目を設置している学校では実施割合が高く、積極性がみられる。

【図表 15】起業に関連したイベント・プログラムがある大学

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